栄養素の基礎知識(ビタミン)

ビタミンは3大栄養素のようにエネルギー源や体の組織作り成分になりませんが、体の機能を正常に維持するため生理作用の調整を行ないます。ビタミンは現在13種類発見されていますが、食べ物など外部から摂取しないとそれぞれのビタミンに特有の欠乏症が発生します。ビタミンは油に溶けやすい「脂溶性ビタミン」(4種類)と水に溶けやすい「水溶性ビタミン」(9種類)に大別されます。

1.脂溶性ビタミン(4種類)

脂溶性ビタミン共通の特徴は以下の通りです。

  • 摂取しすぎると頭痛、不眠、吐き気などの症状が発生します。但し、ビタミンEは余り問題がないようです。
  • 皮下組織の脂肪層に蓄積され、水に溶けませんので、尿として排泄されません。
  • 脂質と一緒に摂取しないと体内に吸収されません。

(1)ビタミンA(ex.緑黄色野菜、アンコウの肝、ウナギ)

視力、特に暗い場所での視力がアップします。具体的には目の網膜でタンパク質のオプシンと結合してロドプシンを作り暗順応をスムーズにします。皮膚や粘膜を強くし、うるおいのある肌にします。不足すると、免疫力が低下し感染症にかかりやすくなります。抗酸化物質として活性酸素を除去します。骨の形成、胎児の成長、母乳作りに不可欠です。

(2)ビタミンD(ex.アンコウの肝、紅鮭、サンマ)

歯や骨を硬くします。骨の約60%はカルシウムと無機リン酸が結合した無機物の「ハイドロキシアパタイト」という硬い物質です。ビタミンDはカルシウムを小腸から血液に移動させ、リン酸を「骨にならない有機リン酸」から「骨になる無機リン酸」に変化させます。日光を一日20分前後、週3回浴びるだけで皮膚の中でコレステロールから合成されます。但し、皮膚の色、季節、年齢などによってはビタミンDの合成量が不足することがありますので、食べ物からも摂取しなければなりません。乳ガンや大腸ガンなどのガン予防ができる事も近年明らかになっています。

(3)ビタミンE(ex.キングサーモン、ウナギ、カボチャ)

種の保存、つまり妊娠するために必要不可欠です。抗酸化物質として活性酸素を除去します。細胞を若くし、エストロゲンの分泌を促進し、血栓を防ぎます。特に赤血球の老化を防止します。

(4)ビタミンK(ex.あしたば、キュウリ、納豆)

肝臓で作られる血液凝固の中心となる「プロトロンビン」(タンパク質)の働きを助け、出血時に血液を固めて止血します。カルシウムが骨に沈着するときに必要なオステカカルシン(タンパク質)を活性化します。ビタミンKには緑黄色野菜に含まれるK1と納豆などの発酵食品や腸内細菌で作られるK2があります。ビタミンK2の約80%は腸内細菌で作られますが、抗生物質を乱用すると腸内細菌は死滅しますので、食物からも摂取する必要があります。腸内細菌が少ない新生児に、出産数日後にビタミンK2シロップが与えられます。

2.水溶性ビタミン(9種類)

水溶性ビタミン共通の特徴としては以下の通りです。

  • 一度に大量に摂取しても体内に貯蔵されませんので毎日適量を摂取する必要があります。
  • 熱、光、空気、湿気などによって壊れやすいデリケートな物質です。

(1)ビタミンB1(ex.豚肉、内臓)

不足すると脚気や神経痛が発症します。脚気が起こると、末梢神経を冒し、足がだるく、知覚もマヒし、浮腫を起こします。

(2)ビタミンB2(ex.レバー、酵母)

不足すると口内炎、口角炎、肌の乾燥、目が光に過敏になりチカチカします。酸には強いが、特に熱と光に弱く簡単に壊れ、他のビタミンも巻き添えにして破壊します。

(3)ナイアシン(ex.レバー、玄米)

水溶性でも薬などとして長期に大量に摂りつづけると肝臓や胃に障害が出ることがあります。不足すると「ペラグラ」になり、皮膚の色はドス黒くツヤがなくなり皮膚が落ち、胃腸もやられて下痢になります。エストロゲン、テストステロン、インスリンなどの重要なホルモンの合成に使われます。

(4)ビタミンB6(ex.肉、野菜)

タンパク質を分解したり、必須アミノ酸以外のあるアミノ酸から他のアミノ酸にする酵素の補酵素となります。不足すると、イライラしたり、脱毛したり、痙攣を起こします。

(5)ビタミンB12(ex.肉、乳製品)

葉酸とコンビを組んで赤血球を作り、いずれか一方が不足すると悪性貧血になります(巨大赤芽球)。体内で還元作用やメチル基の移動に関与しますので不足すると神経障害が発生します。植物には全く含まれず、動物由来の食物にのみ含まれていますので、菜食主義者は特に補給する必要があります。

(6)葉酸(ex.ほうれん草、酵母)

酵母よりもほうれん草に多量に抗貧血物質が含まれていることが判り「葉酸」と名づけられました。ビタミンB12とコンビを組んで赤血球を作ります。腸管から吸収されてもそのままでは栄養素として機能せず、ビタミンCが葉酸に水素を付加してはじめて機能します。

(7)ビオチン(食物全般に広く分布)

生卵の白身のアビジン(タンパク質)はビオチンと結合すると機能できなくなります。微量ながら様々な食品に含まれ、さらに腸内細菌でも合成されますので不足することは滅多にありませんが、もし不足すると、脱毛、疲労に襲われ、気分が落ち込みうつになります。

(8)パントテン酸(食物全般に広く分布)

デンプンを分解する酵素の補酵素となったり、性ホルモンやヘモグロビンの生産にも寄与します。野菜、肉類、魚類に含まれ、さらに腸内細菌でも合成されますので不足することはまずありませんが、もし不足すると疲労、睡眠障害、吐き気などの症状が発生します。

(9)ビタミンC(ex.柑橘類、緑黄色野菜)

ビタミンの王様として生体内での働きは40種類以上も発見されていますが、最も大きなものは細胞を守る抗酸化物質としての働きです。体のタンパク質の約30%を占めるコラーゲン生成遺伝子に働きかけてコラーゲンを合成します。

3週間ほど摂取しないと壊血病になり、痙攣、関節痛、食欲減退、下痢、めまい、出血などの症状が生じます。黒色メラニンの生成を防止するのみならず、黒色メラニンの白色化により肌を色白にします。二日酔いの原因となるアセトアルデヒドをすばやく分解し酢酸にします。

ビタミンは糖鎖の働きで細胞内に取り込まれる

ビタミンCの細胞への取り込みには、ブドウ糖輸送体というポンプが働きます。ビタミンCの分子構造(C6H8O6)はブドウ糖の分子構造(C6H12O6)に似ていて、特に酸化型ビタミンCはさらに似ています。ビタミンCとブドウ糖には競合関係があり、ブドウ糖輸送体はビタミンCよりもブドウ糖をより優先して細胞内に取り込みます。

ブドウ糖輸送体は通常は細胞の内部にあります。すい臓からインスリンが分泌されると細胞表面のインスリン受容糖鎖に結合し、その合図でブドウ糖輸送体は細胞の内部から細胞表面に移動し、血液中のブドウ糖と酸化型ビタミンCを捕らえて細胞内に運び入れます。そして細胞内で還元酵素の働きで、酸化型ビタミンCは通常のビタミンCに再生されます。以上のようにビタミンCと細胞内の取り込みには糖鎖が積極的に関与しています。

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