栄養素の基礎知識(ミネラル)

1.ミネラルの基礎知識

地球上に存在する物質を化学的に最小単位に分解したものを「元素」といいますが、現在までに120種類ほど発見されています。「元素」の観点から人間の体(重)を分解しますと酸素(65%)、炭素(18%)水素(10%)、窒素(3%)の4種類の「主要元素」で96%を占め、残り僅か4%が「ミネラル」になります。糖質、脂質、タンパク質、ビタミンは複数の「主要元素」から作られています。なお、「ミネラル」の語源はmine(鉱山、鉱石などの意味)に由来しています。ミネラルのうち、人間の体に基本的に必要なものを「有益ミネラル」、基本的に害になるものを「有害ミネラル」と呼ばれます。

2.有害ミネラル

体内で増加する主な原因として、水銀は魚介類から有機水銀(全体の85%超)、歯の詰め物に使用されている水銀合金のアマルガム、一部のワクチンの中に入っている防腐剤から体内に入ります。鉛は水道水の引き込み管から溶け出す鉛、鉛の吸収を促進するフッ素などから体内に入ります。

カドミウムはほとんどの食品に含まれていますが、約50%は主食の米から体内に入ります。体内から有害ミネラルは、便(75%)、尿(20%)、汗(3%)、毛髪(1%)、爪(1%)から排泄されます。具体的な解毒、排泄手段としては、食物繊維の積極的摂取、ビタミンCや多くの有益ミネラルを含むマルチミネラル、断食(朝食のみを抜くプチ断食から本格的断食)などがあります。なお、腸内洗浄は腸内の悪玉菌のみならず善玉菌も排除しますのであまりオススメできません。なお、「有益ミネラル」と「有害ミネラル」はライバル関係にありますので「有益ミネラル」が増えれば「有害ミネラル」は減少するといわれています。

3.有益ミネラル

人間の体に基本的に必要な「有益ミネラル」は一日当りの必要摂取量が100mg以上の「主要ミネラル」(約90%)と100mg未満とされる「微量ミネラル」(約10%)に分類されます。

4.代表的な主要有益ミネラル

カルシウム(ex.乳製品、昆布、ブロッコリー)

カルシウムは人体に最も多いミネラル(体重の約1.8%)で99%は骨(歯)に存在します。残りの1%が血液中に溶けています。骨を構成する成分は年齢にもよりますが、約70%が無機物でほとんどリン酸カルシウム、残りの20%は有機物でほとんどコラーゲン、残りの約10%が水分です。

骨は20代まで伸び、30代になると成長が止まり骨密度を上げますが、40代以降になると骨重(骨の重さ)は軽くなり、老人になるとカルシウム不足で骨粗鬆症になる人がいます。なお、骨粗鬆症は女性ホルモンのエストロゲンの低下が主因となりますので女性の方が男性よりも5~6倍多く発症します。

血中のカルシウムが不足しますと副甲状腺ホルモンが分泌され、骨のカルシウムが血液中に溶け出し、余った分は骨に戻らずに血管内に溜り、血管は硬く柔軟性がなくなり動脈硬化の原因になります。

リン(ex.卵の黄身、チーズ、青魚、米)

リンは体内に約600gあり、そのうち80%はカルシウムと結合しリン酸カルシウムとして骨を作り、残りの20%は細胞の内部、血液、筋肉などに広く分布しています。遺伝子や細胞膜の原料となったり、ミトコンドリアで作られるエネルギーATP(アデノシン三リン酸)の原料になります。血液、唾液、母乳などの体液のPH値を一定に保つための原料になります。

カリウム(ex.果物、野菜、コーヒー、ココア)とナトリウム

カリウムは細胞内に多く、ナトリウムは細胞外に多く存在し細胞の浸透圧を維持したり、水分を保持しています。ナトリウムを過剰に摂取すると、高血圧になる可能性が高くなりますが、カリウムを摂取することで、過剰なナトリウムは尿中に排泄されます。ところが腎臓機能が低下している人がカリウムを過剰に摂取すると、尿中に排泄出来ずに高カリウム血症になることがあります。

マグネシウム(ex.玄米、昆布、キャベツ)

体内のマグネシウムの約65%は骨に、約25%は筋肉の細胞に、残り約10%は他の細胞に分布しています。3大栄養素を分解してエネルギー源になるATP(アデノシン三リン酸)を作る酵素を助けています。ブドウ糖からグリコーゲンを作ったり、逆にグリコーゲンを分解してブドウ糖を作る酵素を助けています。筋肉を作るタンパク質やメッセンジャーRNAをリボゾームまで誘導します。カルシウムを多く摂取するとマグネシウムの吸収が低下しますので特に骨粗鬆症になる可能性の高い女性はマグネシウムを充分摂取して下さい。目安はカルシウム:マグネシウムの割合が2:1になります。

鉄分(ex.レバー、鶏卵、ヒジキ、ニボシ)

鉄分の最大の役割は赤血球を作ることです。鉄の約70%はタンパク質のヘモグロビンに含まれ(機能鉄)、残りの30%は貯蔵鉄として肝臓と脾臓にあります。

鉄分は形状の違いによってヘム鉄とノンヘム鉄があります。ポルフィリンの真中にあり、がっしりとした作りのヘム鉄(ex.赤身の肉、魚、レバーなどの動物性食品)の吸収率は平均30%で安定し食べ合わせによって左右されません。

一方、アミノ酸やペプチドと結合し、弱々しい作りのノンヘム鉄(ex.穀類、果物、野菜などの植物性食品)の吸収率は2~20%と不安定で低く、食べ合わせの影響を受けます。ビタミンCやクエン酸を一緒に摂取すると吸収率はアップします。鉄分を摂取する場合は化学的性質が似ているカルシウムがあるとノンヘム鉄の吸収率は著しく低下します。

コーヒーやお茶に含まれるタンニンは鉄分と結合して沈殿しますので吸収されなくなります。カルシウムやタンニンを避けるには時間をずらして摂取することです。不足するとイライラしたり、頭が痛くなったり、疲れやすくなります。あまり深刻な症状ではないので見過ごすことが多くなります。

銅(ex.魚介類、レバー、豆)

銅はヘモグロビンの合成や、鉄分の吸収を助けます。不足すると、貧血、毛髪異常が現れたり子供の場合は成長障害を起こすことがあります。

ヨウ素(ex.ノリ、ワカメ、昆布、ヒジキ)

日本国内で生活し、普通の食事を摂取している限り、ヨウ素不足の心配はありませんが、特定の国や地域では不足することがあります。ヨウ素は首のそばにある甲状腺で吸収され「チロキシン」というホルモンのパーツになって基礎代謝量をアップします。不足すると甲状腺が腫れる甲状腺腫になり喉の近くが大きくなります。

5.遺伝子・タンパク質・糖鎖の関係

生命情報を担うDNA(デオキシリボ核酸)はA・G・C・Tの4種類の塩基がヒモ状に結合した生体高分子です。そして、その一部が染色体上に分布し遺伝情報を担いアミノ酸の種類を指示する遺伝子でヒトの場合は約2万2000個あります。アミノ酸の種類や配列情報によって20種類のアミノ酸からヒトの場合、約10万種類の高分子化合物のタンパク質が作られます。

DNAもタンパク質も分子は折りたたまれ複雑な立体構造をしていますが、引き延ばすと両者とも1本のヒモ状になります。そして、約10万種類のタンパク質の半数以上と多くの脂質に糖鎖が結合して、主に細胞表面に存在しています。

糖鎖はDNAやタンパク質と異なり1本のヒモ状ではなく、複雑に枝分かれをして伸びています。ヒトの体内で利用される単糖はグルコースやガラクトースを含めて10種類ありますが、同じ単糖の組合せから構成される糖鎖でも結合の仕方により糖鎖の種類や働きは異なります。

この様に、複雑な構造をもつ糖鎖は糖転移酵素など約200種類の糖鎖合成関連遺伝子によって作られる酵素の働きで合成されます。

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