書籍紹介「自律神経の科学」鈴木郁子 著

「自律神経の科学」
鈴木郁子 著 ISBN978-4-06-526716-5

病院に行くほどの症状ではないにしても、ちょっと体がだるいな、体調が悪いな、なんだか気持ちが落ちつかないな、などと感じることは、よくありますね。そんなとき、自律神経が原因かもしれない、ということをよく聞きます。
Ⅰ 自律神経系
あらゆる内臓の情報を脳に届けたり、全身の血管に分布し、それらの機能を調整しています。
1.分類
(1)求心性神経の内臓求心性線維
求心性線維は、末梢(各器官)から中枢(脳・脊髄)へ情報を運ぶ神経
(2)遠心性神経の交感神経と副交感神経
遠心性神経は、中枢から末梢に情報を運ぶ神経
(3)腸管神経
中枢神経系でも末梢神経系でもなく、脳や脊髄につながっていないにもかかわらず、構成する独自の感覚神経と運動神経により腸の蠕動運動を起こす神経

2.特徴
自律神経系の大きな特徴は「二重支配」と「拮抗支配」の2大原則
(1)二重支配
ひとつの臓器に交感神経と副交感神経の両方がつながっている。
(2)拮抗支配
ひとつの臓器に対して交感神経と副交感神経が相反する作用を示す。
(3)二重支配の例外(交感神経だけで調整)
汗腺、副腎髄質、皮膚の血管などは、交感神経だけで調整される。
(4)拮抗支配の例外
・唾液腺は交感神経も副交感神経も唾液を分泌する。
・涙腺は交感神経と副交感神経が協調して涙を分泌する。

Ⅱ 自律神経症状の特徴
1.自律神経症状は内蔵症状ともいわれ、心と身体が関わっている。
2.循環器系の自律神経症状にはめまい、ふらつきなど、消化器系の症状には下痢、便秘など、泌尿器系の症状には頻尿などがある。
3.自律神経失調症の原因はよくわかっていない。ストレス、生活習慣の乱れ、薬の過剰摂取で症状が起こりやすい。
4.自律神経の受容体に作用する薬は、全身に影響する可能性が高い。
5.自律神経活動の調整は意思によってある程度可能である。たとえば体を動かすと交感神経活動を、リラックスすると副交感神経活動を高められ、自律神経のバランスをとることで症状を改善できる。
6.現代社会は利益や効率を求めるあまり交感神経活動を高めすぎ、心身の不調を招いている可能性がある。
7.よい生活習慣の継続が自然治癒力を高め、病気の予防につながる。

「整いたい」あなたへ。自律神経が、心身を巧みに調整している!!

2024年3月7日 9:02  カテゴリー:書籍紹介

書籍紹介「子どもの異変は「成長曲線」でわかる」小林正子 著

「子どもの異変は「成長曲線」でわかる」
小林正子 著 ISBN978-4-09-825451-4

子どもの発育をよく観察し、身長や体重の測定値を数値のままにしないで目に見える形にする、すなわちグラフにすれば、からだの健康状態も、心の健康状態も見えてきます。そのグラフは単に方眼紙の上に描くのではなく、子どもの発育の基準線の上に描いて「成長曲線」として表すことで、驚くほどはっきりと子どもの心身の健康状態が見えてきます。
Ⅰ 成長曲線
パーセンタイル基準線(発育基準曲線)上に、継続して個人の身長と体重の測定値を点で描きこんだものをいい、次の重要な事柄が判明します。
1.健康の確認
(1)身長と体重が基準値にだいたい沿うように推移していれば問題はありません。
(2)女子は思春期になると体重が急に増え基準線のレベルから上昇しますが問題はありません。
(3)身長と体重の両者が基準線のレベルが大きく変化しないことが重要です。
2.異常の早期発見
(1)身長あるいは体重が成長曲線の基準線から大きく上下した場合、成長ホルモン、甲状腺ホルモン、脳腫瘍、摂食障害、イジメなど何らかの病気(症状)が原因で身長の高低あるいは体重の増減など発育に異常がある可能性があります。
(2)身長が低学年から急に伸びる子どもは、いわゆる「思春期早発症」が疑われ、放置すると最終的に極端な低身長になる可能性があります。
3.思春期の身長スパートの開始時期・初潮の時期の予測
(1)女子は9歳半頃から、男子は11歳前後から平均的な身長スパートが開始します。
(2)男女とも、身長スパートの開始が早い(早熟型)よりも遅い(晩熟型)方が、最終的に身長が高くなる傾向があります。

Ⅱ 身長はいつ伸びる?いつ止まる
1.身長はいつ伸びる
人生の中で身長がとりわけ伸びる時期は2度あります。
(1)生まれてからの1年間
最初の大きな伸びは生まれて1年間で、約50cm前後で生まれ、1年で約1.5倍、75cmほどになります。
(2)思春期
・女子は4年生あたりから身長がスルスル伸び、男子を追い抜きます。
・男子は女子より1年半から2年くらい遅れて伸び、女子を追い抜きます。
2.身長と体重
身長スパートは、まず足が伸び、次いで座高が伸び、最後にまた足が伸びます。
(1)女子の場合
・一般的に身長スパートより2年ほど後に体重スパートがあります。
・体重が先にスパートすると、初潮も早く到来する傾向があり、身長はあまり伸びません。
(2)男子の場合
・身長スパートが先に始まり、体重スパートはその後1年ぐらいが一般的です。
・一割弱ですが、体重が身長より先にスパートする例もあります。
3.身長はいつ止まる
男女とも18歳付近でほとんど伸びなくなり止まります。
(1)止まる時期の目安
・男子は声変わりをした後、女子は初潮が発来した後に徐々に伸びる量が減り、やがて止まります。
・但し、骨端線(骨が細胞分裂する成長軟骨層の部分)が残っていれば、さらに身長が伸びる余地はあります。
・従って、身長スパート期には骨に大きく負担のかかる運動は避けた方が良い。
(2)季節変動
・身長は夏に伸び、体重は冬に増加します。
・但し、現代は季節変動に反して、生活習慣の乱れで、夏の体重増加を繰り返し、肥満になることがあります。

「成長曲線」はすべてを教えてくれる!!
発育研究の第一人者が「早期発見」が子どもの健康を守ると警鐘を鳴らす!!

2024年2月15日 9:02  カテゴリー:書籍紹介

書籍紹介「予測脳」カリン・イエンセン 著・中村冬美 訳

「予測脳」
カリン・イエンセン 著・中村冬美 訳 ISBN978-4-296-00148-4

重い病気や激しい痛みを抱えた経験のある人は、「やがて治る」という希望がどれほど大きな力になるかを知っている。「治る」という希望は、理屈を超えたところで私たちの身体に作用する。本著では、希望や期待が実際に私たちの身体にどんな影響を与え、プラセボ効果につながるかをさまざまな角度から考察しています。
1.手術成功への期待(2009年NEJM、メイヨー・クリニック)
骨粗しょう症で脊髄を圧迫骨折した患者131人を対象とした手術で、半数は本物の手術(骨セメント)、残りの半数は具体的な治療せず、身体を切ってすぐに縫合(プラセボ手術)を受けた。結果は、本物の手術もプラセボも改善効果は同等であった。
この研究での注目点は以下の通り
(1)比較的よく行われる手術にはプラセボ手術を超える効果は少ない。
(2)症状が改善した要因は手術以外の別(ex.手術への期待、医師との信頼関係)のことにあるよう。

2.治療の効果は3段式ロケット
すべての治療の効果は、薬の有効成分、プラセボ効果および自然経過によるトータルである。
(1)「本物の治療かプラセボか」と考えるのではなく、有効な成分とプラセボとの相乗効果をいかに生み出すかがポイント。
(2)精神・神経疾患など症状の大部分が脳のプロセスによって大きな影響を受ける病気はプラセボが効く可能性はある。
(3)しかし、プラセボで、深刻な病気を治すことも、病気の根本的な原因に影響を及ぼすことはできない。
なお、本書では、アスリートが高いパフォーマンスを発揮するために行うゲン担ぎの儀式を通じて、期待が本人にどんな影響を与えるかも取り上げています。

運動も薬もサプリメントも「効く」と信じるほうが断然お得!!

2024年2月1日 9:06  カテゴリー:書籍紹介

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