書籍紹介「女は筋肉 男は脂肪」樋口 満 著
女は筋肉 男は脂肪
樋口 満 著 ISBN978-4-08ー721107-8
日本人の体力は、20年前に比べて、60歳代から70歳の男女ともに右肩上がりで向上している。しかし、かかりやすい病気や死因はもちろん、筋量、持久力、柔軟性、脂肪量など男女の間には多くの差異がある。本書では、科学的な根拠をもとに、男女別の運動法や食事術を紹介する。今、気にするべきは女性は“筋肉”をつけることであり、男性は“脂肪”を減らすこと。
(1)女性は筋肉をつけなければいけない理由
無理なダイエットによる「やせ」や、身体活動量がかなり少ないことが、やがて筋肉の衰えや骨密度の低下につながり、骨粗鬆症、サルコペニア、ロコモティブシンドローム、さらにアルツハイマー型認知症にいたるリスクを招きやすい。
(2)男性が脂肪を減らさなければいけない理由
内臓脂肪の蓄積が、高血糖、脂質異常、高血圧を招き、動脈硬化につながり、糖尿病、脂質異常症、高血圧を発症させ、悪化させる(レプチンとアディポネクチンの機能低下と減少)。
(3)筋肉を増やす運動・内臓脂肪を減らす運動
女性は筋肉をつけたければ「筋トレ」を男性は内臓脂肪を減らしたければ「有酸素運動」をメインにした方法を選ぶこと。なお、「筋トレ」と「有酸素運動」のいずれの利点を持ち合わせたローイング(ボート漕ぎ)がおすすめ。市販のゴム状のチューブを使えば、自宅でローイングと同じ効果が得られる。
(4)筋肉を増やす食事・内臓脂肪を減らす食事
女性が筋肉を増やすためには、運動トレーニングだけでなく、筋肉や血液など体の組織や細胞を作る働きをするタンパク質を少なくとも、1日当たり50g以上摂取すること。男性の内臓脂肪を減らすためには「有酸素運動」だけでなく、野菜を中心とした「副菜重視型」の食事パターンを実行することです。
女と男で異なる運動と食事のポイント!!
2020年7月2日 8:54 カテゴリー:書籍紹介
書籍紹介「アレルギーと腸内細菌」 藤田紘一郎 著
アレルギーと腸内細菌
藤田紘一郎 著 ISBN978-4-8470-6162-2
本来、人の体内に侵入してきた病原菌を殺すのは、免疫の働きです。免疫とは、身体を病気から守る防衛システムのこと。外から病原菌が体内に入り込んでも、免疫がしっかり働いていれば、細菌を殺すことができます。ところが、清潔志向を強めた日本人は免疫から大切な仕事を奪いとってしまいました。「風邪やインフルエンザや食中毒が怖い」と、病原体だけでなく、なんの悪さもしないウィルスや細菌もひとまとめに排除の対象としてしまったのです。そのとき使用されるのは、抗菌剤や除菌剤、抗生物質などの薬剤です。薬剤は「悪い菌か、健康に良い菌か、無害な菌か」などと細菌を見分けたりしません。薬剤を使えば、悪い菌も良い菌もすべてが排除の対象となってしまうのです。
職を失った免疫細胞は、今度は相手をしなくても良いダニの死骸や花粉、食べ物などにも丁寧に対応するようになります。その免疫細胞たちの異常な攻撃によって起こる炎症こそが、アレルギーなのです。ではなぜ、こうした異常事態が起こるのでしょうか。免疫力が低下するからです。免疫システムの力が落ちれば、選別する力も低下し、許されて良いはずの非自己を「敵」と見間違え、過敏に反応するようになってしまいます。
免疫力を発揮する細胞のほとんどは、腸の粘膜に存在し、それが身体全体の免疫システムを支えています。ですから、免疫力を高めるには腸内細菌がポイントになります。アレルギーを防ぐ腸内細菌の状態は、①多種多様な細菌がいること ②細菌の数が多いこと ③善玉菌が優勢に整っている ことです。
なお、近年の研究で、抗体のなかのIgA抗体が腸内細菌を選別することが判りました。3歳までに腸に侵入してきた細菌のうち、どの細菌を腸に住まわせ、どれを排除するのか、IgA抗体が決めます。細菌が腸の粘膜に住みつくには、IgA抗体と結合する必要があり、結合しなかった細菌は、腸から排除されます。なお、お母さんの初乳にはIgA抗体が大量に含まれています。
あなたは、なぜ「アレルギー」になったのか、あなたの「アレルギー」はなぜ治らないのか。そのカギは腸内細菌にある!!
2020年6月18日 8:54 カテゴリー:書籍紹介
書籍紹介「どこからが病気なの?」 市原 真 著
どこからが病気なの?
市原 真 著 ISBN978-4-480-68366-3
結局のところ病気とは「こないだまでの自分がうまく保てなくなること」。健康とは「こないだまでの自分をうまく保ち続けていること」(ホメオスタシス)。と定義します。その上で、病気であるとはどういうことか、平気であるとは、どういうことなのかを見ていきます。
私たちの体は都市であり、無数の細胞たちが極めて高度に分業と連絡調整を行うことで平穏無事に保たれています。奇跡のメカニズムはそう簡単に外敵の侵入を許さないし、仮にゲリラ的に何かが侵入してきても優秀な防衛部隊がそれを討ち取る。防衛部隊の放水攻撃や火炎放射によって、ときに局所が、あるいは全身が、様々な症状に襲われ「なんだか調子が悪いな」とか「ノドが痛いな」とか「鼻水が出たな」とか「首が腫れたな」などと感じる。このような経験があると、つい「病気であれば平気でない」し、「平気なら病気はない」と言いたくなる。
でも、一見なんの症状もなく平気でいるときにも都市のライフラインに圧をかけてダメージを蓄積させるような病態が潜んでいることはある。そうすると「病気と平気」の境界は少しずつとろけて、わかりにくくなる。
「病気VS平気」という二項対立は、西洋医学の発達により、もはや成り立っていない。平気でも病気のことがあるし、病気であっても平気に暮らせることもある。だから、病気かどうか決めることと、平気かどうかを決めることは、別々にやったほうがいい。病気かどうか決めるのは医者であり、自分自身であり、社会でもある。治療が可能か、という観点でも判断されるが、さらにいえば「この先どうなるのか」という未来予測的な観点で人体を推し量ることが診断の真骨頂だ。
ときに社会が人を病気というフレームにはめ込んでしまうこともあるが、そのレッテル貼りは適切なこともあれば、ややピントが外れだと感じることもある。なぜかというと、病気であっても平気な場合、平気であっても病気である場合など、見た目と、生物学的な定義と心の問題とか、それぞれ別に立ち上がってくるからだ。
病んでいるのか?元気なのか?フォロワー10万人の病理医が教える病気のしくみ!!
2020年6月4日 8:43 カテゴリー:書籍紹介