書籍紹介「『エビデンス』の落とし穴 」 松村むつみ 著
「エビデンス」の落とし穴
松村むつみ 著 ISBN978-4-413-04613-8
健康情報については「結局のところ、その健康法は体にいいのか悪いのか」という「答え」を知りたと思う方が多いと思います。そのためにも、そもそもエビデンス(科学的根拠)が何であるのか、どういう仕組みでエビデンスの評価がなされ「信頼できるエビデンス」が築かれていくのかを知っておく必要があります。ひとくちに「エビデンスあり」と言っても、実はエビデンスには様々な段階=ランクがある事は、一般にあまり知られていません。医学の世界では、エビデンスの信頼性の強弱を「エビデンスレベル」と言い以下の様にレベル1から6に分けられ、レベル1が最も信頼性が高く、レベル6が最も信頼性が低くなります。
【エビデンス6】「専門家の意見」
具体的なデータなどに基づかない「専門家の意見」で、医学専門誌に掲載される様な専門家の意見もここに入ります。
【エビデンス5】「症例報告」
専門の教科書に載っていない珍しい症例や、通常の治療は効かなかったけれど、特定の治療を試したら効果があった様な症例の論文や学会発表
【エビデンス4】「症例対照研究」「コホート研究」
過去に遡るって、病気の原因などについて研究したり、大規模な疫学調査による研究
【エビデンス3】「非ランダム化比較試験」
【エビデンス2】「ランダム化比較試験」
例えば、新しい薬の効果を確かめる際に、参加する患者さんを二つのグループに分け、一方のグループには新しい薬を投与し、もう一方のグループには、ニセの薬(人体に無害)を投与する場合のグループ割りをランダムに行うか否かによる違い。
【エビデンス1】「システムマティックレビュー」「メタアナリシス」
複数の研究を統合して、結果を出したもので、通常このプロセスを経て、専門分野ごとに「診断や治療のガイドライン」が作成される。
どれも「エビデンスあり」なのに正反対の情報が出てくるのはなぜ!?
2021年10月21日 9:00 カテゴリー:書籍紹介
書籍紹介「病気にならない新常識」古川哲史 著
病気にならない新常識
古川哲史 著 ISBN978-4-10-610890-7
病気予防は「食事」「運動」「睡眠」「ストレス」の4つが鍵を握っていますが、それらの常識は以下の様に次々と上書きされています。
1.食事
(1)満腹中枢を刺激するシグナル
満腹シグナルは ①胃が膨らむ事 ②血糖が上昇する事 ③噛む事 がありますが、③は唯一食べ過ぎる前に満腹中枢を刺激します。
(2)理想の食事は1975年の日本食
他の年代に比べて魚・果物・野菜・海藻・大豆製品・出し汁・発酵系調味料など植物性タンパク質、不飽和脂肪酸が多く含まれています。
2.運動
(1)有酸素運動は脳のサイズを大きくする。
海馬のサイズを大きくし記憶力の改善につながる。
(2)海馬の萎縮を予防する心房利尿ペプチド(ANP)
ANPは腎臓に作用して尿量を増やしたり、増えた心拍数を元に戻す事で心臓の負担を軽減します。
3.睡眠
(1)記憶と睡眠
ノンレム睡眠中に海馬で一時的に保管されている記憶を、大脳皮質に移動させて「長期記憶」にします。さらに、レム睡眠中にその記憶を呼び出しやすくする様に整理します。
4.ストレス
(1)ストレスによって起こる2つの反応
ストレスホルモンが出ると、交感神経が活性化され、交感神経が活性化されると「視床下部➡下垂体➡副腎」軸が活性化され、ストレスホルモンが分泌されます。
(2)苦味を強く感じる人は、ウィルスや細菌の防御力が強い
線毛活動、一酸化窒素の産生および、ディフェンシン(タンパク質)の生成作用により苦味受容体が防御します。
2021年10月7日 8:51 カテゴリー:書籍紹介
書籍紹介「ライフサイエンス」吉森 保 著
ライフサイエンス
吉森 保 著 ISBN978-4-8222-8866-2
本書では、生命の基本単位である細胞について学び、次に病気について学びます。どんな病気でも必ず「細胞が悪くなっている」。つまり、病気だと感じた時はすでに細胞に何かが起きています。そして、細胞を「若返らせる」機能であり、著者の専門でもあるオートファジーについて学び細胞や病気の研究の最前線に触れる事ができます。「細胞がおかしくなる」中で一番大きいのは、細胞が死んでしまう場合ですが、その代表例は次の3つです。 (1)細胞内にタンパク質の塊が溜まって、その結果死んでしまう(ex.アルツハイマー病、パーキンソン病) (2)ウィルスなどの病原体に殺される(ex.インフルエンザ、新型コロナウィルス感染) (3)細胞内の「原発事故」(ミトコンドリアの崩壊)が原因で細胞が死ぬケース(ex.がん、心不全)。なお、細胞を「若返らせる」機能であるオートファジーの要点は以下の通りです。
(1)オートファジーのプロセス
オートファジーは「細胞の中の物を回収して、分解するリサイクル現象の事で ①平たい隔離膜が形成➡ ②膜を伸長させて、タンパク質やオルガネラ(細胞小器官)を包み込みオートファゴソームを形成➡ ③消化酵素が入ったリソソームと結合しオートリソソームの形成➡ ④タンパク質などが分解されオートリソソームの小さな穴を抜けてアミノ酸などが再利用される。
(2)オートファジーの役割
①飢餓状態になった時に、細胞の中身を分解して栄養源にする
②細胞の新陳代謝を行う・・・毎日240gのタンパク質を分解し再利用
③細胞内の有害物質を除去する・・・例えば、病原体を除去する自然免疫能
(3)オートファジーを止める「ルビコン」
オートファジーのブレーキ役となるルビコンは高脂肪食により肝臓で増え、老化によっても増える。
(4)オートファジーが防御的に働くと考えられる代表的な病気
①生活習慣病 ②神経変性疾患 ③肝臓がん ④腎臓の病気 ⑤心不全
(5)オートファジーを活性化させる天然の成分
代表的なものに「スペルミジン」があり、納豆などの豆類や発酵食品、シイタケなどのキノコ類に多く含まれています。なお、「スペルミジン」は体内でアミノ酸から作られますが、老化により作る量は激減します。
長生きせざるをえない時代の生命科学講義!!
2021年9月16日 8:59 カテゴリー:書籍紹介