書籍紹介「牛乳は子どもによくない」 佐藤章夫 著
牛乳は子どもによくない
佐藤章夫 著 ISBN978-4-569-82166-5
何を飲もうと勝手ではあるが、牛乳は単なる飲み物ではない。ミルクという白い液体は小さく生まれた哺乳類の子どもを速く大きくするために母親が分泌する成長促進剤である。しかも、最近の牛乳は妊娠しているウシから搾られていて、女性ホルモンの含有量が多い。たとえ愉しみのために口にするにしても、できるだけ少量にすべき代物である。それなのに日本政府は法律で児童・生徒に牛乳という特定の食品を強要してきた。
牛乳に成長促進作用があるのは、牛乳の飲用によって細胞分裂を刺激するインスリン様成長因子ー1(IGF-1)が血液中に増えるからである。下垂体前葉が分泌する成長ホルモンは、それ自身が細胞分裂を刺激するだけでなく、肝臓などでIGF-1の産生を促すことによって間接的に成長促進作用をもたらす。成長ホルモンそのものはヒトとウシで異なるが、IGF-1はヒトとウシで同一である。ミルクに含まれているIGF-1は細胞の分裂増殖が最も盛んなときにその力を発揮する(すなわち、子どもでは乳児期と思春期。大人では癌に罹ったとき)だから、離乳期を過ぎた人間は牛乳などを飲んではいけないのである。
酪農家は、毎日の牛乳生産量が大きく変わらないようにするため、妊娠していない牛、妊娠前期の牛、妊娠中期の牛および妊娠後期の牛の4種類の乳牛から搾乳する。従って、4分の3(75%)は妊娠牛から搾乳したものになる。妊娠すると、子宮内に胎児を保持するために、血中の卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の濃度が高く、ミルクは血液から作られるから、妊娠中の乳牛から搾ったミルクが女性の乳癌と男性の前立腺癌の最大の誘因であると考えている。また、牛乳にはカルシウムが豊富に含まれているが、骨粗鬆症は、牛乳をたくさん飲む欧米諸国に多い事実も指摘する。
牛乳はすばらしい飲み物である。ただし、仔ウシにとって。ここに昨今の牛乳問題の本質がある。
2015年2月19日 9:00 カテゴリー:書籍紹介