書籍紹介「臓器の時間」 伊藤 裕 著
臓器の時間
伊藤 裕 著 ISBN978-4-396-11348-3
脳、心臓、腎臓、肺、胃、腸など私たちの体は、様々な臓器から成り立っています。年をとると、こうした臓器の機能は、どんどん衰えていきます。臓器には各々「賞味期限」があり、それぞれが「砂時計」を持つ、とたとえられます。砂の量が、その臓器の稼働時間を示し、すべての砂が底に落ち切った時が、その臓器の「死」で脳や心臓の死は、私たちの肉体の死に直結します。著者は臓器の「砂」が落ちていくスピードを「臓器の時間」あるいは「臓器の時間の進み方」と呼んでいます。老化のなかで臓器機能が障害されていくと、どんどん「砂」は尽きてしまいます。
「臓器の時間」を決めるひとつの大きな要因は臓器に供給される血液の量です。血液量が臓器の機能維持の生命線であることは容易に理解できますが、どの臓器が多くの血液を消費するのでしょうか?
第1位は腸で30%、第2位は腎臓で20%、そして第3位は脳と骨格筋で15%です。
確かに脳は重量が体全体の2.5%しかないわりには、血液を多量に必要とする臓器です。そして、腸と腎臓、この二つの臓器こそ、「臓器の時間」の進み方が速い、つまり「老いやすい臓器」です。このように書くと「腸と腎臓は、つまり便と尿を排泄する臓器は疲れやすい。それほど排泄行為は大変なのだ」と思われるかもしれません。しかし、実際はまったく逆で、腸も腎臓も体の「外」から「内」へ物を「吸収する」仕事をしていて、このことが大変疲れるのです。腸は吸収するというのは理解できますが、なぜ腎臓が吸収なのでしょうか。それは、血液を糸球体というフィルターでろ過する臓器は1日100リットルの「原尿」を作ります。人間の1日の尿量は1~2リットルなので原尿の99%が再び吸収されて利用され、この再吸収に多大なエネルギーを必要とします。また、腸と腎臓の疲れはミトコンドリアの疲れなので「臓器の時間」は、ミトコンドリアが決定しているといえます。
本書は「臓器の時間」をベースにして、臓器が脳に指示を出す(臓器の思考)、ひとつの臓器が悪くなると他の臓器も悪くなる(臓器連関)、臓器の記憶性を活かした治療(時空医療)といった最新研究成果と共にわかりやすく説明しています。
あなたの「臓器の時間」はどこまで進んでいますか?
2014年2月20日 9:05 カテゴリー:書籍紹介