書籍紹介「がん患者よ、医療地獄の犠牲になるな」 近藤 誠・ひろさちや 共著 

がん患者よ、医療地獄の犠牲になるな
近藤 誠・ひろさちや 共著 ISBN4-537-25280-4

ユダヤ教から派生したキリスト教の本質は砂漠の宗教です。『旧約聖書』にあるように、キリスト教においては人間は神の被造物であって、神から「生命」を与えれたのです。人間はその「生命力」でもって、いわば、「死」の世界である砂漠に生きます。つまり「死」と闘いながら生きるのがキリスト教の原則です。

しかし、仏教はそうではありません。仏教が発祥したのはインドであり、インドはモンスーン地帯です。そこでは自然は湿潤であり、人間に恵み(生命力)をもたらしてくれます。従って「死」の原理は、むしろ人間の側にあり死すべき人間を自然が、その恵みで生かしてくれています。それゆえ、仏教とキリスト教では「死」や「老」「病」に対する考え方が反対になります。

欧米人が老いや病と闘って生きるのは、キリスト教の考え方です。彼らは神が「生命」を与えてくれたのだから、その「生命力」でもって老いを克服し、病を克服せねばならないと信じています。ですが、老・病・死と闘って人間は勝てないことを欧米人はよく知っています。つまり、彼らは生きることを楽しんでいます。ところが、日本人は負けを承知で闘うことはできず、勝つことばかり考えていますので、がんと闘わないほうがいいと、ひろ氏は主張しています。

一方、近藤氏はこれからの健康や病気に関する考え方や、医者や医療との付き合い方次第で、死ぬまでの人生が幸せにも不幸にもなりえる。それには、健康や医療の価値を絶対視しないことが大切であると主張します。

世の中には病気は忌むべき状態である。健康に価値がある。健康が幸せの前提であるという考え方に取りつかれた人が多く、健康を維持すれば、よい最期を迎えられると思っているようである。しかし、そこには落とし穴があります。健康を維持するためにと、何かにつけて医者や医療機関に頼ってしまうため、見えない鎖で医療機関につながれ、寿命を縮めたり、体調を落としたり、医療事故にあう可能性が高い。現在、体調良好な人は、なるべく医療機関に行かず健診や人間ドックなどの検査も受けないほうが、心穏やかで充実した人生を送ることができる。

がんという最大の難題をめぐり医者と宗教学者がたどりついた「哲学」が本書で示されています。

2013年12月19日 9:22  カテゴリー:書籍紹介

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