書籍紹介 「人の死なない世は極楽か地獄か」 池田清彦 監修
人の死なない世は極楽か地獄か
池田清彦 監修 ISBN987-4-7741-4908
ヒトを含めた高等動物の体細胞は分裂性の細胞(皮膚、肝臓など)と、非分裂性の細胞(脳の大部分、心臓など)からなる。分裂性の細胞は、分裂によりリニューアルされるが、分裂回数は約50回と決まっている。一方、非分裂性の細胞は徐々に老廃物を溜め込んでいき、細胞自体が老化していく。この2つの要因がヒトの最大寿命を決定しているようだ。
確かに、平均寿命が延びるのは慶賀すべきことかもしれないが、様々な問題が生じてくることも否めない。命に限りがある以上、いたずらに長命を求めるよりも、命の質に注目することのほうが大事かもしれない。その中には、いかに上手に死ぬかという命題も含まれるはずだ。本書は四章から成っており、
第一章は 三人の論者による長寿社会をどう生きるべきかという提言。
第二章は 日本が直面している少子高齢化についての主張。
第三章は 生物学から見た寿命論。
第四章は 「潔さの生き方」論。
本書の中で一番考えさせられるのは第四章に収められた以下の三つの主張かもしれない。大津先生は緩和医療医としての長年の経験から、死を敗北としてのみ捉える考え方に疑問を呈している。久坂部先生は医師であるにもかかわらず、高齢になったらなるべく病院に行かないほうが良いという。病院に行っても老人の病気はまず治らないし、余計な心配が増えて、お金と体力と時間を奪われるだけだと言う。最後の上田先生は、宗教とほぼ無縁な日本人の、これからの生き方について示唆に富む提言で、今持っているものを全く手放さず、新しいものを付け加えていく人生が最善だと考えているうちは、人は大きく成長することはできないとの主張。
ところで、皆さんは何歳で死ぬのが理想ですか?
2013年8月8日 8:58 カテゴリー:書籍紹介