書籍紹介 「夜と霧(新版)」 ヴィクトール・E・フランクル 著
夜と霧(新版)
ヴィクトール・E・フランクル 著 池田香代子 訳
ISBN4-622-03970-2
本書の原題は「強制収容所におけるある心理学者の体験」です。本書はオーストリア・ウィーン在住の精神科医の著者がただ「ユダヤ人である」というだけの理由でナチスにとらえられ、強制収容所アウシュビッツ到着から終戦による解放に至るまでの約半年間の収容所生活での体験をつづったものです。
著者が最も描きたかったのは、人間以下の牛馬のような扱いを受け、明日の命の保障もない捕虜たちの中に、それでもなお何ものにも冒されない、一種の崇高さすら持った精神が息づいていたことです。例えば、自分も飢えているのに、別のもっと飢えた人に自分のパンを与える人がいたり、過酷な状況下にあっても夕日の美しさに感動する心を忘れない人がいた。
多くの科学者は、人間は極度の飢餓状態に置かれると、仲間を殺し、人肉を食べてでも生き延びようとするものと考えていました。しかし、著者が強制収容所中で実際に目の当たりにしたものは、それとは異なり、極限状態において、人間は天使と悪魔に分かれるという事実を発見しました。
そして、「人生の意味」については、生きる意味はあるのかと「人生を問う」ことではなく、人生の様々な状況に直面しながら、その都度「人生から問われていること」に全力で応えていくことだと「コペルニクス的転回」を著者は求めています。
「言語を絶する感動」と評され、人間の偉大と悲惨をあますところなく描いた本書は、日本をはじめ世界的なロングセラーとして600万を超える読者に読みつがれ、現在にいたっています。原著の初版は1974年、日本語版の初版は1956年、その後著者は、1977年に新たに手を加えた改訂版を出版していますが、本書は、原著1977年版にもとづき、新しく翻訳されたものです。人間とは何かをつねに決定する存在である!!
2013年6月20日 9:30 カテゴリー:書籍紹介