書籍紹介 「栄養学を拓いた巨人たち」 杉 晴夫 著
栄養学を拓いた巨人たち
杉 晴夫 著 ISBN978-4-06-257811-0
われわれが今日のように長生きできるようになったのも、医学の進歩による感染症の征服、住環境の改良に加えて、栄養学の成立により、われわれの日々の食生活が著しく改善されたからである。新聞や雑誌などでは日々、栄養や食生活についての解説や、サプリメントや健康食品の類いの広告が絶えることがない。
ところで、栄養士が料理の献立をつくる際に食品のカロリー計算をするのは、われわれが食物として体内に取り入れた栄養素をゆっくりと燃焼させ、そのとき発生するエネルギーを利用して生活しているからである。しかし、今までは「当たり前」となったこの事実に人類が気づくまでには、多くの孤高の天才たちの文字通り「血みどろ」の努力を土台として、現代の熱力学と栄養学が構築されていく道筋をたどることである。
まず、第1章は、ラボアジエやボルツマンの、文字どおり生命を賭けた先駆的研究に始まり、生体が摂取した食物を体内で燃焼させ、このとき発生するエネルギーによって生命を維持する仕組みが明らかにされる。
第2章は、摂取した食物が体内で消化・吸収され、糖質、タンパク質、脂質などの栄養素に分解され活動のエネルギー源として利用される仕組みが明らかとなり、栄養素が学問として確立してゆく歴史。
第3章は、病原菌による伝染病を征服した人類の前に現れた難問、「病原菌のない病気」の原因解明の歴史。
第4章は、第3章に引き続き、水溶性ビタミンであるビタミンB群の発見史を、日本人の貢献もあわせてたどる。
第5章は、われわれの体内で起こる化学反応(エネルギー代謝反応)の解明の歴史。
第6章は、主に我が国を例にとって、栄養学の社会とのかかわりを考察。
著者は、栄養学の確立に貢献した先人たちの血のにじむ努力に思いをはせ、彼らが明らかにした栄養学の知識を読者が自らの健康増進に役立てていただく事を切に願っています。
2013年6月13日 9:25 カテゴリー:書籍紹介