書籍紹介 「毒と薬のひみつ」 齋藤勝裕 著

毒と薬のひみつ
齋藤勝裕 著 ISBN978-4-7973-5026-5

毒と薬は化学的には同じもので、まったく同じ分子構造をしています。適量を服用すれば薬になりますが、たくさん飲むと毒に変身します。

私たちの周りには、毒物があふれています。トリカブト、テングタケ(キノコ)、フグ、水銀などの典型的な毒はもちろん、ジャガイモの芽、ヒトヨタケ(キノコ)、ブダイ、ハンダのような思わぬ毒もあります。
ヒトヨタケは健康な人が普通に食べれば問題はありませんが、お酒と一緒に食べるとひどい二日酔いになり、命を落とすことさえあります。ブダイはなんともない時はなんともないのですが、貝毒のように季節によって毒をもつことがあります。ハンダは鉛がタップリと入っています。しかし、私たちの祖先は毒を飼いならし、毒を手なずけて、毒を最強の味方につけました。飼いならされて人間の味方になった毒は“薬”と、その名を変え人類の最強の伴侶になっています。

もし、薬がなかったら私たちの経験する一生は、今とはかなり違ったものとなり、それは日常生活にとどまらず、人生観はもっと悲痛で悲劇的なものになったのではないでしょうか?その意味では、人間の歴史のバックグランドを塗り替えるほどの意味をもっています。

毒にも薬にもなれる物質は、いま私たちの身の周りにあり、現在も毒となるか薬となるか、決めかねています。例えば、サリドマイドは優れた睡眠薬として世にでましたが、ほどなくアザラシ症候群発病という悪魔の面をみせつけました。しかし、今また、優れた抗癌剤、ハンセン病治療薬として天使の顔で微笑んでいます。このように、薬は常に毒になる機会をうかがっており、毒は薬として名誉挽回の機会を待ち望んでいます。従って、毒だからといって必要以上に怖がらず、薬だからといって安心せず、良識ある中庸の態度を取り続けることが肝心です。

本書の狙いは、読者が楽しみながら毒と薬に関する知識を身につけることにあります。毒も薬もすべて使いよう。正しい知識で使いこなそう!

2013年3月28日 9:14  カテゴリー:書籍紹介

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