書籍紹介「傷はぜったいに消毒するな」 夏井 睦 著
傷はぜったいに消毒するな
夏井 睦 著 ISBN978-4-334-03513-6
ケガをしたら「消毒して乾かす」が世間の常識。しかし、著者によれば、消毒は「傷口に熱湯をかけるような行為」だという。傷は消毒せず、乾燥させなければ、痛まず、早く、しかもきれいに治るのである。著者は今注目の「湿潤治療」を確立した形成外科医である。その治療効果に驚いた医師らにより、湿潤治療は各地で広まっている。
「湿潤治療」は、10年ほど前から著者が独自に始めたもので、薬も、高価な治療材料も使わずに擦りむき傷も熱傷(ヤケド)も治してしまうという治療で治療法の原則は2つだ。
(1)傷を消毒しない。消毒薬を含む薬剤を治療に使わない。
(2)創傷面を乾燥させない。
ところで、消毒薬はどうやって細菌を殺しているのでしょうか?消毒薬にはさまざまな種類があるがどれも破壊のターゲットはタンパク質である。つまり細菌のタンパク質の立体構造を化学的作用・物理的作用で変えて、タンパク質の機能を失わせて細菌を殺す。しかし、消毒薬は人間の細胞膜タンパク質も変性し、人間の細胞膜を破壊する。さらに、人間の細胞膜タンパク質と細菌の細胞膜タンパク質を比較すると、人間の細胞は細菌とは異なり細胞壁をもっていないので、消毒薬によるダメージは人間の細胞膜タンパク質の方がはるかに大きい。従って、傷を消毒しない方がよい。傷はジュクジュクと出てくる滲出液に細胞成長因子と呼ばれる物質を含み、その物質が傷を治す。
一方、創傷面を乾燥させると皮膚の細胞も真皮細胞も肉芽組織も死滅し、一旦死んだ細胞も組織も蘇ることなくカサブタという形の死骸になる。従来は、カサブタができると治ると誤解されていたがカサブタは要するに、中に細菌を閉じ込めて上からフタをすることになり、いつまでも治らず、閉じ込められた細菌が暴れると化膿することになる。従って、創傷面は乾燥させない方が早くきれいに治る。
以上のように本書の内容は、身体の力を生かす「最新治療」である!!
2013年2月14日 9:14 カテゴリー:書籍紹介