書籍紹介 「老化はなぜ進むのか」 近藤祥司 著

老化はなぜ進むのか
近藤祥司 著 ISBN978-4-06-257662-8

科学的な見方をすると、老化には大きく分けて2つあると考えられます。1つは「個体老化」もう1つは「細胞老化」と呼ばれるものです。個体が老化すると、シワが増えたり、筋肉が衰えたりします。一般の女性が老化と捉えて悩んでいるシミやシワは「外見(見た目)の老化」と呼べるものです。しかし、個体老化では外見以外にも、体の中で内臓の機能が低下したり、病気になりやすくなったりするという現象も同時に起こっています。その結果、病気が重症化し、治療不可能となると個体の死が訪れます。

一方、細胞老化とは、われわれの体を構成する体細胞には分裂回数に限界があり、寿命があるという現象のことです。つまり、あと何回分裂増殖できるか、その残りの回数が減っていくことが細胞にとっての老化といえます。個体は細胞の集合体として存在するから、個体老化も細胞老化も同じことではないかと考えることはできます。じつは歴史には、個体老化と細胞老化は別々に研究がなされてきました。研究する材料が別々(前者はマウスや線虫など、後者は培養細胞など)であったという理由以外にも、それぞれ別々の原因(前者は酸化ストレスなど、後者はテロメアなど)が想定されたからです。

1990年代以降、老人研究が進むにつれて遺伝子など老化に関わる役者が明らかになってきました。酸化ストレスやテロメア以外にも細胞周期制御因子、癌抑制遺伝子、Sir2遺伝子、DNA修復遺伝子、核タンパク質遺伝子、炎症関連遺伝子など続々と老化に関与する遺伝子が判明してきました。そうした流れの中で興味深いことに個体老化と細胞老化の共通点が徐々に明らかとなり、最近では相互に関連した研究がなされるようになっています。

本書では老化の研究の始まりから、どう発展してきたか、何がかかわりつつあり、何がかかわらないのか、それは現実の日常生活で感じる老化とどう結びつくか、といった点についてわかりやすく解説されています。くしくも、日本では高齢化社会の到来とともに様々な医療問題が出現しつつあり老化に対する関心はますます高まりを見せています。そこで、本書は老化研究や老化予防医療に対する一定の理解に役立つことを意図して老化研究の最先端から医療応用までを俯瞰しています。

2012年11月22日 9:12  カテゴリー:書籍紹介

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