書籍紹介 「平穏死」という選択 石飛幸三 著
「平穏死」という選択
石飛幸三 著 ISBN978-4-7790-6066-3
今、日本は世界最高の高齢社会を迎えています。少子高齢化、右肩下がの経済、このままでは医療介護の負担を子孫に負わすことになります。わかっていながら動かない政治、そんな中で老衰に介入する医療の矛盾を認識し、医療のあり方を再検討することは医療者にとって喫緊の課題です。これからの生涯がまだ残っている人を真剣に救わないで、もう先が見えている人を、十分に生きてゆっくり休みたい人を、無理にがんばらせている構図が今現にあります。高齢者を見殺しにするのか、弱者切り捨てだ、一見正論のようでも実は見当外れの過剰反応です。今、我々に必要なことは理性的に現実を分析すること、そして対策をを立てて実行することです。今や医者の矜持が問われています。経口摂取不能、それはもはや単に「口から食べる」という一機能の脱落ではなく、老衰、生物体としての終焉という自然の摂理なのに「方法があるのだからしなければならない」「保護責任者遺棄致死罪だ」と胃ろうを付けてでも生かさなければならないと考えるのは、一種の教条的な義務感の信奉者、犠牲者かもしれません。
ところで、厚労省も自然死を認める方向に大きく舵を切りました。2011年12月5日の新聞各紙はこれを大きく報道しています。口から十分に栄養や水分を摂るのが難しくなった高齢者に人工栄養素を導入せず、自然に経過を見るという選択肢もあることを示し導入した場合でも中止できることを定めた指針を公表しました。さらに2012年6月、日本老年医学会も高齢者の終末期における胃ろうなどの人工的水分・栄養補給について新たなガイドラインを発表しました。これらの意味するところは、老衰において医療がどこまで介入するか、何が大切か、本人の生きている生活の質をあらためて前面に押し出され、それが認められたのです。
本書は「看取り」の医師が提唱する自然な最期の迎え方を1つの選択肢として提案しています。
2012年11月15日 9:27 カテゴリー:書籍紹介