書籍紹介 「日本人が知らない漢方の力」 渡辺賢治 著
日本人が知らない漢方の力
渡辺賢治 ISBN 978-4-396-11264-6
漢方は日本独自の伝統医学である。中国で「漢方」といっても、現地の人には通じない。たしかに漢方は、文字どおり中国古代の漢時代の医学にその起源を持つが、実学を重視した日本ならではの発展を遂げたものだ。
そして、古くさい昔の医学では決してなく、認知症やインフルエンザ、アレルギーなど様々な病気に威力を発揮するなど、極めて現代的である。わが国では医師の9割近くが漢方薬を日常診療に用いており、最先端医療と結びついて癌の治療現場で抗癌剤の副作用の軽減などで大いに役立っている。
今、この日本の漢方が世界から注目を集めて欧米を中心に海外から多くの留学生が訪れ、漢方を積極的に学んでいる。漢方が見直されるようになった背景として著者は以下の4つを挙げている。
(1)臓器ごとの細分化が過度に進んだことへの反省
(2)副作用への危惧
(3)不安愁訴に対する扱い
(4)疾病構造が感染症から慢性疾患に変化
しかし、この漢方が存続の危機に瀕している。それは、漢方薬の原料である生薬資源の枯渇、中国が狙う「中医学」の標準化、国民の無関心にある。
現代医療が抱える様々な問題点は漢方の活用によって解決できるか、漢方がひとりでに隆盛して、統合型のよりよい医療になる訳ではない。現状のままであれば漢方そのものが縮小し消滅しかねないという岐路に立っていると著者は強く主張する。
2012年8月9日 9:28 カテゴリー:書籍紹介