書籍紹介 「糖鎖のはなし」 平林 淳 著

糖鎖の話
ISBN 978-4-526-06164-6
平林 淳

「糖鎖」はタンパク質などの生体物質と結合することで、そのものの溶解性を上げたり、行き先の目印になったり、安全性を高めるなど多種多様な機能を持つ。生命の進化と共に歩み、無限の可能性を秘めたこの物質は、DNA・タンパク質に次ぐ第三のバイオポリマーとして、癌や再生医療の有用マーカーなど医学分野での応用・解析が進められてきている。ただし、糖鎖が様々な生命現象に深く関わっていることを伝えているだけが本書の目的ではなく、糖・糖鎖の起こりについて、科学の目で見直してみたい。

糖鎖の起源は古く、糖鎖の機能が生命の隅々まで行き渡っているが、糖の起源や生物進化との関連については今までほとんど議論されたことはなかった。起源が古ければ生物に共通した「インフラ」が出来上がる。タンパク質を構成するアミノ酸の種類(20種)が全生物でも共通であるのと同様に、糖鎖の構成成分(約10種類)も共通していることは、驚嘆に値する。あえてこのような進化の問題に切り込むのは、糖に対する根本的な理解が糖鎖研究者の間でさえ、欠落していると危惧するからだ。

糖そのものへの理解がなければ、次の時代のイノベーションは期待できない。真の革新的な技術の創出や製品開発には、糖鎖の本質の理解、特に化学レベルでの再考が不可欠だというのが著者の思いである。

2012年6月28日 11:51  カテゴリー:書籍紹介

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