書籍紹介「「頭がいい」とはどういうことか」毛内拡 著

「「頭がいい」とはどういうことか」
毛内拡 著 ISBN-978-4-480-07615-1

「頭がいい」とは、IQや記憶力だけでなく、感覚や運動能力、アートと創造性、他者の気持ちがわかる能力なども含まれます。そのような能力を発揮し続けるための力を、著者は「能の持久力」と名付け、そこに深く関係する脳細胞、アストロサイトに注目します。

Ⅰ ニューロンを守るアストロサイト
1.脳の老廃物を流す
(1)脳表面を流れる脳脊髄液(血漿成分)は脳組織の中に浸透して、脳細胞の隙間に蓄積している老廃物を流しますが、その駆動力を生み出すのがアストロサイトです。
(2)中枢神経では唯一アストロサイトだけが、水の通り道となるタンパク質であるアクアポリン4を有し、水の出し入れを抑制することで、細胞の隙間の体積を調節したり、イオン濃度を制御しています。
(3)隙間の体積は睡眠中に広がり(全体の20%)、よく水が流れ老廃物が洗い流されます。
(4)しかし、老化によりアクアポリン4に変化が起こり、水の流れが悪くなると、アミロイドベータが脳に異常に蓄積すると考えられます。

2.脳を余分な化学物質から守る
(1)アストロサイトはシナプスを取り巻き、例えばシナプス伝達で使用したグルタミン酸を素早く吸収し、グルタミンの形に変換してからニューロンに返します(伝達を中断しててんかん状態を防止)。
(2)「血液脳関門」の血管一本一本にアストロサイトの突起が巻きついて、余計な物質が脳内に侵入しないように取捨選択しています。

3.ニューロンにエネルギーを与える
(1)血管を取り巻いているアストロサイトはグルコースを取り込み、それを、ニューロンが使える形にして与えています。
(2)うつ病などの精神疾患やアルツハイマー病などの神経変性疾患にアストロサイトの機能不全が関与していることも少しずつ判明しています。

Ⅱ アストロサイトの活性化
1.シナプス可塑性に影響を与えるアストロサイト
(1)シナプスの伝達効率は状況に応じて強くなったり、弱くなったりしますが、以下のようにアストロサイトがシナプスに作用して可塑性に関与していることもわかり始めています。
(2)アストロサイトは単に脳内の環境を整えるだけでなく、自ら伝達物質(グリア伝達物質)を放出して、脳の情報伝達に関与しています。

2.いつアストロサイトが活性化するのか
(1)まだ、不明な事は多いが、間違いないのは、生命に危険がない程度の低血糖、低酸素、低血圧などで、脳がピンチに陥っている時。
(2)あるいは思いがけないぐらい楽しいとか高揚感というような強い情動喚起の時に活性化します。

能力を発揮し続けられる人と続けられない人の違いは、「脳の持久力」!!

2025年2月20日 9:01  カテゴリー:書籍紹介

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