書籍紹介「健診結果の読み方」永田宏 著

「健診結果の読み方」
永田宏 著 ISBN-978-4-06-535193-2

本書は健診で良く出てくる項目について、臓器別・病気別にまとめて解説しています。ここでは、その中でも特に近年、注目度の高い肝機能検査と腎機能検査について考察します。

1.肝機能検査
(1)代表的な検査は、血液検査によるAST、ALT及びγ-GTPの3つの酵素です。
(2)ASTは、肝臓以外に心筋や赤血球にも多く含まれるので、肝臓以外の病気でも上昇します。
(3)ALTは、肝臓や胆管にだけ多く存在しますので、血中濃度が上昇すれば、それらの臓器に問題があります。
(4)ALTがASTより高ければ、アルコール性肝炎、ASTのみ高いと心臓に問題がある可能性があります。
(5)γ-GTPは肝臓の解毒作用に関わる酵素なので、大量の飲酒で肝細胞が傷つくと血中濃度が上昇します。
(6)血中のビリルビンが高いと、先天的な体質でない限り、肝臓や胆道が悪いと考えられます。
(7)黄色い色素物質のビリルビンは、約4ヶ月で寿命がつき脾臓で破壊される赤血球のヘモグロビン(酵素運搬タンパク質)の老廃物です。
(8)分解されたビリルビンは血中に放出され、その後、肝臓で処理されて胆汁の一成分として十二指腸に放出され、最後は大便や尿として排泄されます。
(9)肝臓に問題があるとビリルビンのみならず、AST、ALTやγ-GTPの数値も高くなります。
(10)胆道に問題(胆石、胆管がん、膵臓がん)があって、胆道が詰まると、胆汁が排泄されなくなり、血中ビリルビン濃度が上昇し黄疸が出ます。
(11)慢性腎臓病(GLD)にはMAFLD、MAFLD、NASHがあります。
(12)MAFLD(代謝異常関連脂肪肝)は肥満、脂質異常症、2型糖尿などの代謝異常を伴った脂肪肝です(以前はアルコール性脂肪肝と呼ばれていました)。
(13)NAFLD(非アルコール性脂肪肝)は、お酒を(ほとんど)飲まないひとの脂肪肝で、進行するとNASH(非アルコール性脂肪肝炎)になります。
(14)今、日本では、飲酒やウイルスに関係しないNAFLDとNASHが増えています。放っておくと、少しずつ悪化し、肝硬変や肝臓がんになるリスクが増大します。

2.腎機能検査
(1)代表的な検査は、検尿による尿糖(GLU)、尿潜血(BLD)、尿蛋白(PRO)と血液検査によるクレアチニン(CRE)の4項目です。
(2)尿糖は、腎臓で回収し切れなかった血糖ですが、健康な人では尿に糖はほとんど出ません。
(3)空腹時血糖値やHbA1cにも異常が出ていれば、糖尿病が進んでいる可能性があります。
(4)尿潜血は、尿に肉眼では確認できない微量の血液が混じっている状態です。
(5)尿道炎、膀胱炎、痔や生理、尿路結石や腎臓がんや膀胱がんなどでも陽性になります。
(6)尿蛋白は血中に溶けているタンパク質が腎臓で十分に回収されず尿に出てきたもので、病気としては、慢性腎臓病、子宮体腎炎、糖尿病性腎症、高血圧性腎症などの可能性があります。
(7)激しい運動や感染症などで高熱が出た後や生理前後でも陽性になることがあります。
(8)クレアチニンは、慢性腎臓病(CKD)のスクリーニングになる項目で、CKDは糖尿病性腎症、高血圧性腎症、慢性糸球体腎炎、多発性のう胞腎などの病気の総称です。
(9)筋肉のエネルギー源の一種で、アミノ酸から合成されたクレアチンは骨格筋に蓄えられています。
(10)それが、運動で消費されると、老廃物のクレアチニンになって血中に溶け、腎臓から尿と一緒に排泄されます。従って、運動量が多いとクレアチニンは増加します。
(11)クレアチニンの供給量は筋肉量で決まり、排泄量は腎機能で決まります。
(12)筋肉量は加齢により減少しますので、供給量は減ります。しかし、腎機能が弱って、それ以上、排泄量が減ると血中にのクレアチニン濃度は上がります。

気になる項目について、パラッと読むだけで健診結果の見方が変わる!!

2025年2月6日 9:08  カテゴリー:書籍紹介

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