書籍紹介「健康の分かれ道」久坂部羊 著
「健康の分かれ道」
久坂部羊 著 ISBN-978-4-04-082507-6
老いれば健康の維持がむずかしくなりのは当たり前。老いて健康を追い求めるのは、どんどん足の速くなる動物を追いかけるようなもの。予防医学にはキリがなく、医療には限界がある。
1.健康の入口
健康には「入口」があります。持病のある人は別として、子どものころから、青年期までは、常に健康を意識している人は少ないでしょう。しかし、ある年齢になると、健康が気になりはじめます。血圧や体重、血液検査の結果などが頭を離れなくなると、人は健康の「入口」に吸い込まれます。
2.健康の迷路
(1)症状もなく治療の必要もない「異常」を見つけて、精密検査を勧めたり、医療機関の受診を勧めたりする無駄と迷惑。
(2)検査の基準値を厳しくして、どんどん病人と判定。されたほうも納得し、感謝さえする現状。
(3)高血圧は動脈硬化の危険性を高め、心筋梗塞や脳梗塞などの病気につながります。しかし、動脈硬化は血圧以外に喫煙、肥満、高コレステロール症、糖尿病、運動不足なども危険因子になります。この事実を無視してそれぞれの学会は自分たちの基準だけを押しつける。
(4)超音波診断では、肝のう胞、肝血管腫、腎のう胞、腎石灰化など症状もなく、治療の必要もない異常を見つける。
(5)検診で早期がんが見つかり、手術を受けた人が命拾いしたと実感し、他人にも受診をすすめたりします。しかし、検診で見つかるがんは、手術しなくても命に関わらない可能性があります。
(6)2023年に承認されたアルツハイマー病に対する新薬レカネマブは、進行を遅くしても、進行を止めることも症状を改善することもなく、使用適用は軽度に限られます。一方で、脳浮腫や微小出血の副作用の危険もあります。アミロイドβが原因か結果かは不明です。
(7)誤嚥性肺炎は食べたものだけでなく、唾液の誤嚥でも起こり、胃ろうにしたから安全というわけではありません。
(8)さらに、入院して抗生剤投与や人工呼吸などの治療をしても、嚥下機能は回復しませんから、再発する可能性は少なくありません。
3.健康の出口
健康の呪縛から自由になったとき、それが健康の「出口」です。いつまでも健康を追い求めてもキリがありません。老化が原因で起こる病気のほとんどは、医療では治せません。下手に病院に行ったりすると見つけなくていい病気まで見つけられ、重症化して入院すると、次々新手の治療が繰り出されて、気がついたらチューブと機械だらけの悲惨な延命治療になっていることも稀ではありません。
よって、残された時間をどう使うか真剣に考えたら、健康に時間を取られるより、ほかにすべきことがいろいろあります。
まちがいだらけの「健康」願望。
健康を望みすぎず楽しく老いる。
2025年1月16日 9:04 カテゴリー:書籍紹介