書籍紹介「心の病気はどう治す?」佐藤光展 著
「心の病気はどう治す?」
佐藤光展 著 ISBN978-4-06-53469-4
本書は、精神医療界のオールスターチームによるメンタル向上のためのガイドブックです。回復に役立つ知識から、社会的課題を解消するヒントまで、ありったけの情報が盛り込まれています。
(1)依存症「ヒトは生きるために依存する」(松本俊彦先生)
最も有害なアルコールが野放しになっていることからも分かるように、よい薬物、悪い薬物という分け方に科学的な根拠はありません。ですが、薬物の悪い使い方をしている人は、ほぼ間違いなく他に困りごとを抱えています。『困った人』は『困っている人』なのです。日本の精神科は薬物療法偏重なのは、薬が最も低コストで、時間をかけずに診療が終えられるからです。
(2)発達障害「精神疾患の見方が根底から変わる」(原田剛志先生)
表面的な症状だけで病名を付けて薬を出していたら治るものも治りませんよ。どんなタイプの人が、どんな状況の時、何をきっかけに、どういう不適応を起こしたのか、などを聞かないと正しい診断はムリです。もともとの体質がすごく大事だし、生活環境も大事です。因果関係を把握しないで治療なんかできるわけがない。まずは医者たちを変えないと、誤った治療で搾取される患者たちは減らせない。
(3)統合失調症「開かれた対話の劇的効果」(斎藤環先生)
世界中の学者が50年以上も研究してきて、いまだに統合失調症もうつ病も、発達障害すらもバイオマーカーがないのです。無理なことをやらなくても、オープンダイアローグの手法で治療できるわけですから、もう少し、精神療法の力を信じてもいいのではないかと思います。
(4)うつ病・不安症「砂粒を真珠に変える力」(大野裕先生)
認知行動療法は『元気があるからやれる』のではなく『やるから元気が出る』という見方をします。元気が出るまで待っていては、いつまでも元気が出ないかもしれない。興味を持ったことは、考え過ぎずにやってみる。すると、やっているうちにどんどん面白くなって元気が湧いてきます。
(5)ひきこもり「病的から新たなライフスタイルへ」(加藤隆弘先生)
病的ひきこもりの支援では、大事なのはポジティブな面にまず目を向けることです。ひきこもらざるをえない心境に共感を示し、心の中に安心してひきこもれる場所を作ってあげることが治療の要です。ひきこもっていても、本人が自分らしく生きられるようになればよいのです。オンラインで完結できる仕事はますます増え、仮想空間は急速に拡大しています。
(6)自殺「なぜ自ら死を選ぶのか」(張賢徳先生)
自殺を考える人の心の中は、絶望感に満ちています。しかし、絶望という捉え方は大雑把過ぎて、周囲はどう働きかけたらよいのかわかりません。絶望感の中身は疎外感とお荷物感でそれが自殺行動に関係しています。この疎外感とお荷物感は、周囲のサポートを充実させることで緩和できるはずです。しかし明らかに病的スイッチが入った時は周囲の声もこころに届きません。そんな時は、医療機関の受診を促すことが大事です。
あきらめるのはまだ早い!!
名医に聞いた希望のガイドブック
2024年11月7日 9:01 カテゴリー:書籍紹介