書籍紹介「「心の病」の脳科学」林(高木)朗子 著・加藤忠史 編
書籍紹介「「心の病」の脳科学」
林(高木)朗子 著・加藤忠史 編 ISBN978-4-06-528363-9
心に起因する社会問題はますます深刻化しています。最新の疫学データによれば、精神疾患、つまり「心の病」に一生涯のうち一度でも罹患する確立は80%だそうです。そのような中、質の高い心豊かな生活をおくるためにはどうすれば良いでしょうか。そこには、人が人の脳を正しく理解する「脳リテラシー」こそが、「心の病」の予防や治療への鍵となります。「心の病」を治すのが難しいのは、私たちの脳はとても複雑な仕組みではたらいているからです。しかし、編者ら研究者は、決して精神疾患が不治の病であるとは考えていません。
本書は「心の病」がどうして生じるのか、そして、どこまで研究が進んでいるのかを最前線の科学の視点で解説し、大きく分けて以下の3部から構成されています。
第1部 「心の病」はどこから生じるのか?
「心の病」は脳のどこか不具合を起こし発症する疾患なのか。脳のはたらきを司るゲノム、神経細胞同士のつなぎ目であるシナプス、神経細胞がつながってできる脳回路の3つのスケールから考察します。
第2部 脳の変化が「心」にどう影響するか?
うつや不安、落ち着きのなさ、コミュニケーション障害、感覚過敏などこうした不調も、脳のちょっとした変化から生じる。最新研究から、精神疾患に関係する脳の変化を明らかにします。
第3部 「心の病」の治療への道筋
対処療法でしのぐしかなかった精神疾患の治療に転換期が訪れています。薬物治療だけでなく、ロボットやニューロフィードバックという新技術も進み、「治る病気」となる日も少しづつ近づいている状況を考察します。
なお、脳の疾患には精神疾患(心の病)と神経変性疾患があります。精神疾患では、神経細胞の顕著な細胞死は見られません。一方、神経変性疾患では脳や脊髄にある神経細胞が細胞死を起こします。しかし、両者には、神経細胞間の情報伝達に関わるシナプスの異常や細胞内の情報伝達やエネルギー産生に関わるミトコンドリア異常といった分子レベルの変化から症状が始まるという共通性があります。
うつ病、ADHD、自閉スペクトラム症、PTSD、統合失調症、双極性障害などは脳の中で何が起きているのか?
2023年11月2日 9:08 カテゴリー:書籍紹介