書籍紹介「新版 動的平衡3」福岡伸一 著
「新版 動的平衡3」
福岡伸一 著 ISBN978ー4ー09ー825444ー6
生命は遺伝子という設計図をもとに、ミクロなパーツの組み合わせでできている。
分子生物学では、そのように考える。しかし、機械論的な見方では、生命が持つしなやかさやダイナミズムの説明がつかない。そこで著者は、あれこれ思い悩んだ挙げ句、動的平衡という新たな生命の捉え方を思いつくに至った。
1.動的平衡
生命にとって、エントロピーの増大は、老廃物の蓄積、加齢による酸化、タンパク質の変性、遺伝子の変異…といったかたちで絶え間なく降り注いでくる。油断するとすぐにエントロピー増大の法則に凌駕され、秩序は崩壊する。それは生命の死を意味する。これと闘うため、生命は端から頑丈に作ること、すなわち丈夫な壁や鎧で自らを守るという選択をあきらめた。そではなくむしろ自分をやわらかく、ゆるゆる、やわやわに作った。その上で自らを常に壊し分解しつつ、作り直し、更新し、次々とバトンタッチする方法をとった。この絶え間のない分解と更新と交換の流れこそ生きているという本質であり、これこそが系の内部にたまるエントロピーを絶えず外部に捨て続ける唯一の方法だった。動きつつ、釣り合いをとる。これが動的平衡の意味である。
2.中心は破壊すること
生命は作ることよりも、壊すことのほうをより一生懸命やっている。これは第一義的にはエントロピーの増大を防ぐためだが、もうひとつ重要な意味を持つ。それは、常に動的な状態を維持することで、いつでも更新でき、可変であり、不足があれば補い、損傷があれば、修復できる体制をとっているということだ。だからこそ生命は、柔軟で環境に適応的であり、進化が可能となる。
3.自律分散型の集合体
さらに大切なことは、生命の動的平衡は自律分散型である、ということだ。個々の細胞やタンパク質は、ちょうどジグソーパズルのピースのようなもので、前後左右のピースと連携をとりながら絶えず更新されている。新しく参加したピースは、周囲との関係性の中で自分の位置と役割を定める。既存のピースは寛容をもって新入りのピースのために場所を空けてやる。こうして絶えずピース自体は更新されつつ、組織もその都度、微調整され、新たな平衡を求めて、刷新されていく。生命は自律分散型な細胞の集合体であり、各細胞はただローカルな動的平衡を保っているだけだ。
前記に加えて、組織論や芸術論にまで縦横無尽に話が展開する「福岡ハカセの生命理論」!!
2023年10月19日 9:07 カテゴリー:書籍紹介