書籍紹介「とれない「痛み」はない」柏木邦友 著

「とれない「痛み」はない」
柏木邦友 著 ISBN978ー4ー344ー98673ー2

人の身体は50歳を過ぎると、あちこちに「痛み」が出てくるもの。日本人は「我慢は美徳」とばかりに耐えようとするが、「痛み」は生活の質を落とすだけではなく、深刻な病気のサインかもしれないので、放っておくのは禁物である。

1.「痛み」を我慢してはいけない7つの理由
(1)放っておくと、どんどん強くなる「ウインドアップ現象(中枢感作)」
(2)痛くて寝不足になると、「痛み」はより強くなる
(3)「痛み」をとらなければ、イライラは治まらない(大脳辺縁系への刺激)
(4)「痛み」を我慢していると「異痛症」のリスクも(痛みを感じる閾値が下がる)
(5)神経が「勘違い」をして痛みの原因がある部位から離れたところでの「関連痛」が発生
(6)強い「痛み」は大動脈解離や心筋梗塞を招く
(7)採血や点滴も、痛かったらすぐにスタッフに伝える(神経損傷のリスク)

2.痛みを感じる仕組みと人体に備わった痛みをとる「仕組み」
痛み信号は脊髄神経から脊髄を通って、脳に到着します。人体に備わった痛みをとる仕組みは「下行性疼痛制御系」と「手当て」の2つがあります。前者は、痛みの信号が脳に到達すると脳が痛みを抑制する伝達物質を脊髄に届け、痛み信号を軽減します。一方、後者は痛み刺激を伝わりにくくします(ゲートコントロール理論)。

3.各種鎮痛剤とその特徴
(1)NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)…ロキソニン、ボルタレン、バファリンなど
血管を拡張し、痛みや熱などを引き起こす、体内物質のプロスタグランジンの分泌を抑制する。
(2)アセトアミノフェン…カロナール
下行性疼痛制御系の働きを活性化し鎮痛効果を発揮する。
(3)抗うつ薬…セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
痛みの信号を抑制したり、下行性疼痛制御系の働きを強める。
(4)医療用麻薬…モルヒネ、フェンタニルなど
前記(1)~(3)には「これ以上はいくら飲んでも効かない」という「天井効果」があるが、これには投与すればするほど効果がある。

4.痛みの国際的分類
(1)侵害受容性疼痛
けがや病気などで身体がダメージを受けて生じる痛み
(2)神経障害性疼痛
物理的に痛み信号を生じさせるものがないのに、神経そのものがダメージを受けて生じる痛み(帯状疱疹の神経痛や腰椎椎間板ヘルニアなど)
(3)痛覚変調整疼痛(原因がはっきりしない痛み?)

5.無痛分娩のすすめと麻薬の方法
(1)無痛分娩のすすめ
欧米では無痛分娩は広く行われていますが、国内では2020年の厚生労働省の調査では、8.6%という低率です。危険性が高いとか痛みに耐えてこそ母性が生まれるなどの誤解があるようです。
お母さんが痛みを感じず、リラックスして力が抜けているほうが、お産はスムーズになります。
(2)麻薬の方法
いくつかの種類がありますが、ほとんどの病院では「硬膜外鎮痛」が用いられています。背骨にある硬膜という膜の外側に痛み止めを入れることで痛みを抑える方法です。

痛みをとる手段には多様性があり、「終末期」の苦しみももう怖くない!!

2023年6月1日 9:04  カテゴリー:書籍紹介

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