書籍紹介「孤独という病」池田清彦 著
「孤独という病」
池田清彦 著 ISBN978ー4ー299ー03667ー4
生物というのは本能に従って、結果的に種の継続が可能になるべく、それぞれの環境に則して群れになったり、単独行動を選んでいたりするだけなのだ。従って、孤独といえば、単独であるか群れであるかという物理的な違いによる孤独である。しかし、人間は他の動物と異なり物理的な違いによって孤独という心的な状態になるわけではなく、他者との精神的なつながりの有無やその密度などで孤独を感じている。
そして、どうやら最近では「孤独は死に至る病である」と認識されるようになっている。ところで、なぜ孤独だと死亡リスクは高まるのだろうか。
医学的には、自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが崩れ、ストレスホルモンとして知られる「コルチゾール」が副腎皮質から分泌され続け、心身が不調になるからだ。つまるところ、これらは人間という生物がもともと孤独に弱いということの証でもある。人間にとって孤独とは何か、ということを生物学の視点で突き詰めていくと、私たち人間の「意味を求めなければ気がすまない」というべき病へとたどり着く。生きることも含めてあらゆることに「意味」があると錯覚して、命がある限りその意味を求め続けてしまう。人類もかつては生きる意味などまったく気にしなかったはずだが、社会が発達したことで、生き方に多様性が生じて選択肢が多くなり、意味を求める病が発生したのだ。
つまり、人間が孤独になって感じる不安は、「自分は社会(群れ)の役に立っていないのではないか」という機能主義に付随した不安であることが多い。
従って、ネコと同じように自分の気持ちのおもむくままに生き、食事をし、楽しいことをして死んでいく。これが正しい人生だ。誰かが意図的につくり出した「意味」などという大嘘に惑わされないで、国家や社会のためではなく、自分のためにいちばん心地よい行動をする。実はこれこそが、最も効果的で、最も根本的な「孤独対策」なのだ。
生物学者が生存戦略の視点から説く、現代人のための孤独の飼い慣らし方!!
2023年5月18日 9:14 カテゴリー:書籍紹介