書籍紹介「生物はなぜ死ぬのか」小林武彦 著
書籍紹介「生物はなぜ死ぬのか」
小林武彦 著 ISBN978-4-06-523217-0
加齢による肉体や心の変化は、やむを得ない事だとわかっていても、ポジティブに捉える事はなかなか難しいものです。老化は死へ一歩ずつ近づいてるサインであり、私たちにとって「死」は、絶対的な恐れるべきものとして存在しています。
そこで、こんな疑問が頭をよぎります。なぜ、私たちは死ななければならないのでしょうか?生物は、激しく変化する環境の中で存在し続けられる「もの」として、誕生し進化してきました。その生き残りの仕組みは、進化、つまり「変化と選択」です。変化は文字通り、変わりやすい事、つまり多様性を確保するように、プログラムされた「もの」である事です。その性質のおかげで、現在の私たちも含めた多種多様な生物にたどり着いたわけです。生き物が生まれるのは偶然ですが、死ぬのは必然なのです。壊れないと次ができません。これはまさに「ターンオーバー」(生まれ変わり)そのものです。
つまり、死は生命の連続性を維持する原動力なのです。「死」は絶対的な悪の存在ではなく、全生物にとって必要なものです。生物はミラクルが重なってこの地球に誕生し、多様化し、絶滅を繰り返して選択され、進化を遂げてきました。その流れの中でこの世に偶然にして生まれてきた私たちは、その奇跡的な命を次の世代へと繋ぐために死ぬのです。命のたすきを次に委ねて「利他的に死ぬ」というわけです。生きている間に子孫を残したか否かは関係ありません。生物の長い歴史を振り返れば、子を残さずに一生を終えた生物も数えきれないほど存在しています。地球全体で見れば、全ての生物は、ターンオーバーし、生と死が繰り返されて進化し続けています。生まれてきた以上、私たちは次の世代のために死ななければならないのです。
そして、最も重要な事は、その生-死を繰り返す事のできる舞台となる地球を、自らの手で壊す事がないように守っていく事です。そうすれば、また形を変えて生き物は再生する事ができます。
現代人を救う“新たな死生観”!!
2022年9月1日 8:41 カテゴリー:書籍紹介