書籍紹介 「70歳が老化の分かれ道」和田秀樹 著

書籍紹介 「70歳が老化の分かれ道」
和田秀樹 著 ISBN978-4-908170-31-7

これまで日本人は、戦後の栄養状態の改善により、大きく寿命を延ばし、前の世代より若々しく健康になってきました。しかし、栄養状態の改善効果は1960年くらいに生まれた人たちで終わり、その後平均寿命の延びは医学の進歩によるものです。つまり、若返るのではなく、医学の進歩によって「死なない」から超長寿になるというなが「人生100年時代」の実像です。70代は「老いと闘う時期」ですが、80代以降は「老いを受け入れる時期」になります。

ところで、脳は他の臓器などと異なり、原則的に新しい細胞を作らず同じ細胞をずっと使い続けています。従って、高齢者にとって、脳機能と運動機能をいつまで維持できるかが問題で、維持するためには「使い続ける」事と「習慣化」する事が重要となります。しかし、70代には最大のリスク「意欲の低下」があり、その主な原因は脳の前頭葉の老化と、男性ホルモンの減少です。前頭葉は創造性や他者への共感、想定外の事に対処する機能をもち、男性ホルモンも、性機能だけでなく、他者への関心や意欲、人に優しくなる機能をもっています。ですので、この2つの要素をできるだけ長く維持・活性化できるかが老化の分かれ道となります。

それでは「意欲の低下」を防止するには具体的にはどうすればよいのでしょうか。

(1)肉を習慣的に食べる事で「幸せの物質」のセロトニンの原料となるトリプトファンと男性ホルモンの原料となるコレステロールを摂取する。

(2)散歩などで適度な日光浴の習慣化によりセロトニンとメラトニンを生成する。

(3)できるだけ変化のある生活を心がける。

(4)インプットで得たこれまでの知識を加工し「自分の考え」としてアウトプットする。

(5)「正常値」や「基準値」にこだわらず、いま飲んでいる薬(ex.血圧、血糖値、コレステロール値)を見直す。

幸せな老後とは何か、その答えは人それぞれでしょう。しかし、30年以上にわたって高齢者専門の精神科医として医療現場に携わってきた著者は、歳をとって優しくなる事が幸せな老後への近道と考えています。

2022年3月3日 8:58  カテゴリー:書籍紹介

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