書籍紹介「脳を司る『脳』」毛内 拡 著
書籍紹介「脳を司る『脳』」
毛内 拡 著 ISBN978-4-06-521919-5
これまでは、ニューロンの働きやニューロンが作る回路こそが「脳」だと思われていました。しかし、好き嫌いやおもしろい・悲しいといった「感情」や、人間が持つ「知性」の中には、ニューロンの働きだけでは説明しきれない現象がたくさんあります。こうした人間らしさの象徴ともいえる「こころの働き」には、ニューロン以外の脳が大きく関わっている事が最近わかってきているのです。
脳の中には、知られざる「細胞外スペース」(間質)と呼ばれる「すきま」があり、そこを舞台に様々な脳活動が繰り広げられています。細胞外スペースの体積は、睡眠や覚醒など脳の状態によって増減しています。さらに、細胞外スペースは間質液で満たされて、ノルアドレナリン、セロトニン、ドーパミンやアセチルコリンなど脳内物質の通り道となり、それらが拡散して伝わり、脳の広範囲を調節する事で、こころの働きに関与しています。また、脳を浸している脳脊髄液は、常に流れて入れ替わる事で脳の環境を保ち、間質液と交換する事で脳のリンパ排泄のような働きを担っています。脳脊髄液の流れが異常になる事と、アルツハイマー病のような脳の病気との関連も注目されています。
そして、脳細胞の半分を占めるグリア細胞。グリア細胞の中でも、特にアストロサイトに本書は注目しています。(1)進化的に複雑な脳を持つ動物ほど、ニューロンに対するアストロサイトの比が高い傾向がある (2)マウスとヒトではアストロサイトの大きさも複雑さもまったく異なるなどと指摘し、知性の進化の謎を解く鍵は、アストロサイトにあるかもしれないと述べています。
「人間らしさ」を生み出す、知られざる脳の正体!!
2021年12月16日 8:55 カテゴリー:書籍紹介