書籍紹介「遺伝子のスイッチ」生田 哲 著
遺伝子のスイッチ
生田 哲 著 ISBN978-4-492-04687-6
たとえ一卵性双生児の様に同じ遺伝子を持っていても、同じ結果になるとは限らない。それどころか、同じ結果にならない事が多い。遺伝子の働きは、食事、運動、人間関係などの生活習慣などによって劇的に変わる。そして最近の研究によって遺伝子の働きをかえる仕組み、すなわち、遺伝子を使う(オン)にしたり、遺伝子を使わない(オフ)にするスイッチが存在する事が明らかになった。このスイッチを研究するのが「エピジェネティクス」という、今、爆発的に発展している学問分野であり、本著のテーマである。このスイッチのユニークなところは、環境の変化に応じてDNAの塩基配列を変える(変異)事なく、遺伝子の使い方を変える事にある。具体的に言えば、このスイッチは、ヒストンやDNAにタグをつけたり、外したりする事によって遺伝子のオンとオフを迅速に切り替える。主役は、ヒストン修飾とDNAのメチル化である。
(1)ヒストン修飾(最も重要なのはヒストンのアセチル化)
ヒストンがアセチル化(タグとしてアセチル基がつく)されると、凝縮クロマチンが非凝縮クロマチンに変化し、遺伝子の発現がオンとなる。逆に脱アセチル化されると凝縮クロマチンを形成するので転写が起こらず遺伝子の発現がオフとなる。
(2)DNAのメチル化
DNAがメチル化(タグとしてメチル基がつく)されると、凝縮クロマチンの形成を経由して、遺伝子の発現がオフになる。逆に脱メチル化されると非凝縮クロマチンの形成を経由して遺伝子の発現がオフとなる。
そこで、本書では、薬物依存や食べ物依存、子供の頃の逆境が大人になってから生活習慣病の引き金になる、子供の性格を決めるのは母親による子供のケアである事などをエピジェネティクスを根拠に説明している。
何気ないその行動があなたの遺伝子の働きを変える!!
2021年12月2日 9:21 カテゴリー:書籍紹介