書籍紹介「光免疫療法」小林久隆 著
光免疫療法
小林久隆 著 ISBN978-4-334-04519-7
光免疫療法は、がん細胞を制圧する治療法で、まずは、がん細胞だけに特異的に結合する抗体を使用し、この抗体に近赤外線によって化学反応を起こす物質IR700を搭載し、静脈注射で体内に注入する。がん細胞膜表面のタンパク質に結合した抗体を目印に近赤外光を照射すると、組み込まれたIR700が反応し、それまで水溶性だった性質が一変し、水に対して不溶性の物質に変化する。そこで、結合した抗原と抗体は不溶性となったIR700を覆おうとするため、抗原が引っ張られて細胞膜に1万個程度の傷がつく。この傷により細胞膜が外からの水の流入に耐えられなくなり、流入した水でがん細胞は急激に膨張・破裂して、抗体のついたがん細胞のみがバタバタと破壊される。この一連のプロセスが光免疫療法の基本的な仕組みです。ここでの抗体は、直接にがんを死滅させる役目を持つわけでもなく、いわば爆弾の「運び屋的」な役割を担うものです。
なお、この様な基本的な仕組み以外に以下の様な機能や特徴があります。
(1)転移がんや再発も抑制する
成熟した樹状細胞が、破壊されたがん細胞から放出される抗原を食べて、抗原情報をリンパ球に伝える。リンパ球は生き残ったがん細胞や、余力があれば転移しているがん細胞を攻撃しに行く。それゆえ、最初からがんを100%殺さなくても構わないし、さらに薬剤などの集積毒性もないので、何度でもこの治療を行う事ができる。
(2)がんの共犯者を叩く
がん細胞をかくまっているTreg細胞などの免疫抑制細胞も特異抗体にIR700を乗せて近赤外光の照射で破壊する。
(3)メモリーT細胞を作る
(4)患部がきれいに修復され、瘢痕を残さない。
(5)他の治療に比較してコストが安い。
NIH(アメリカ国立衛生研究所)の日本人開発者による身体にやさしい新治療ががん医療変える!
2021年11月4日 8:47 カテゴリー:書籍紹介