書籍紹介「ライフサイエンス」吉森 保 著
ライフサイエンス
吉森 保 著 ISBN978-4-8222-8866-2
本書では、生命の基本単位である細胞について学び、次に病気について学びます。どんな病気でも必ず「細胞が悪くなっている」。つまり、病気だと感じた時はすでに細胞に何かが起きています。そして、細胞を「若返らせる」機能であり、著者の専門でもあるオートファジーについて学び細胞や病気の研究の最前線に触れる事ができます。「細胞がおかしくなる」中で一番大きいのは、細胞が死んでしまう場合ですが、その代表例は次の3つです。 (1)細胞内にタンパク質の塊が溜まって、その結果死んでしまう(ex.アルツハイマー病、パーキンソン病) (2)ウィルスなどの病原体に殺される(ex.インフルエンザ、新型コロナウィルス感染) (3)細胞内の「原発事故」(ミトコンドリアの崩壊)が原因で細胞が死ぬケース(ex.がん、心不全)。なお、細胞を「若返らせる」機能であるオートファジーの要点は以下の通りです。
(1)オートファジーのプロセス
オートファジーは「細胞の中の物を回収して、分解するリサイクル現象の事で ①平たい隔離膜が形成➡ ②膜を伸長させて、タンパク質やオルガネラ(細胞小器官)を包み込みオートファゴソームを形成➡ ③消化酵素が入ったリソソームと結合しオートリソソームの形成➡ ④タンパク質などが分解されオートリソソームの小さな穴を抜けてアミノ酸などが再利用される。
(2)オートファジーの役割
①飢餓状態になった時に、細胞の中身を分解して栄養源にする
②細胞の新陳代謝を行う・・・毎日240gのタンパク質を分解し再利用
③細胞内の有害物質を除去する・・・例えば、病原体を除去する自然免疫能
(3)オートファジーを止める「ルビコン」
オートファジーのブレーキ役となるルビコンは高脂肪食により肝臓で増え、老化によっても増える。
(4)オートファジーが防御的に働くと考えられる代表的な病気
①生活習慣病 ②神経変性疾患 ③肝臓がん ④腎臓の病気 ⑤心不全
(5)オートファジーを活性化させる天然の成分
代表的なものに「スペルミジン」があり、納豆などの豆類や発酵食品、シイタケなどのキノコ類に多く含まれています。なお、「スペルミジン」は体内でアミノ酸から作られますが、老化により作る量は激減します。
長生きせざるをえない時代の生命科学講義!!
2021年9月16日 8:59 カテゴリー:書籍紹介