書籍紹介「免疫の守護者制御性T細胞とはなにか」坂口志丈 著
免疫の守護者制御性T細胞とはなにか
坂口志丈 著 ISBN978-4-06-517284-1
体内にあるT細胞の「自己免疫」は一律ではなく、自らの細胞に敏感に反応して攻撃し、自己免疫疾患を引き起こす危険があるものも存在する。しかし、制御性T細胞は、こうした自己に過敏に反応するT細胞の免疫応答を抑制する事で、自己免疫疾患やアレルギーの発症を食い止めている。
しかし、制御性T細胞の数が減少したり、機能異常が起きると、関節リウマチ、Ⅰ型糖尿病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患が起きるし、花粉などに反応する様になれば、アレルギーが起き、また、腸内細菌に反応する様になれば炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎とクローン病)が起きる。実は、がん組織には、制御性T細胞が過剰に浸潤している事も分かっている。
そこで、制御性T細胞をうまく操る事ができれば、多くの人を苦しめている様々な自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー疾患、がんなどの治療が可能になると考えられている。また、臓器移植やこれから増えていくだろう人工多能性幹細胞(iPS細胞)などを用いた細胞治療(再生医療)の際に問題となる拒絶反応も抑えられる様になる可能性がある。薬剤による免疫抑制ではなく、自らの体内にもともと存在し、免疫抑制機能に特化した制御性T細胞を用いれば、体に優しくより生理的な治療法となるはずだ。
私たちの免疫系は、なぜ自己の細胞や抗原に対して反応しないのか?免疫学の最大の謎ともいえる「自己免疫寛容」の解明に長年取り組んできた著者が世界で初めて発見した「制御性T細胞」。免疫学にパラダイム・シフトをもたらし「がん」や「自己免疫疾患」の治療や「臓器移植」に革命をもたらすとされる研究の最前線に迫る。
2021年7月15日 8:54 カテゴリー:書籍紹介