書籍紹介「感染症の日本史」磯田道史 著
感染症の日本史
磯田道史 著 ISBN978-4-16-661279-6
歴史上、人類が直面してきた最大の脅威とは何でしょうか。多くの人々が命を落とす点では、戦争、地震や洪水などの自然災害、そして何より感染症です。このうち、最も確実にやってきて、最も多くの死者を出してきたのが「ウィルスによるパンデミック」です。20世紀以降に限っても、1918年流行が始まった「スペイン風邪」、1957年の「アジア風邪」、1968年の「香港風邪」、2009年の新型インフルエンザ、そして今回の新型コロナウィルスと、数10年に1度の頻度で世界中に広がる感染症の大流行が起きています。なかでも突出しているのが、今から100年前に起きたスペイン風邪(新型インフルエンザ)です。当時の世界人口は約18億人で、少なくともその半数から3分1が感染し、死亡者は全世界で、5,000万人(国内で45万人)と推定されています。なお、第1次世界大戦の戦死者は1,000万人とされています。
そもそも「コロナウィルスの歴史」はいつ始まったのでしょうか。
過去の6つのウィルスの遺伝子を解析すると、ヒト型コロナウィルスが初めて出現したのは、およそ紀元前8,000年頃という説が有力です。その時代に「農耕革命」と「定住化」が起こり、西アジアで羊、山羊、豚の「飼育」が始まり「都市」ができて感染症の大流行が頻繁に起こるようになりました。その後の大航海時代以降「ヒトの移動」がそれを増幅しています。今回の新型コロナウィルスにはワクチンも特効薬も開発されていません。未知の感染症のパンデミックに、十分な薬剤や治療法なしに襲われている点では、ある意味、近代以前にも似た未知の状況に置かれていると言えます。
それへの対処には必然的に歴史が必要になります。感染経路、感染条件、衛生状態などの違いはあっても、以前に襲ってきた時の様子を知っておくと似たことがまた起きる場合もあり、感染症を生き延びるうえで、役に立つからです。一級の歴史家が平安の史書、江戸の随筆、100年前の政治家や文豪の日記などから、新たな視点で日本人の知恵に光をあてています。
歴史を紐解けば「給付金」も「出社制限」も「ソーシャル・ディスタンス」もすでにあった!
2021年3月4日 9:33 カテゴリー:書籍紹介