書籍紹介「自粛バカ」池田清彦 著
自粛バカ
池田清彦 著 ISBN978-4-299-00820-6
新型コロナウィルスによるパンデミックの結果、世界経済は大きな打撃を受けたが、それと同時にコロナ禍は人々の本性をあぶり出した。危機に直面すると人は本性をむき出しにすることが多い。不謹慎というそしりを受けるのを承知で言えば、今度のパンデミックも、日本人の本性から行動パターンを観察するまたとない機会となった。
内田樹が『サル化する世界』でいみじくも喝破した「今さえよければ、自分さえよければ、それでいい」という多くの日本人に通底する本心の裏返しとしての“正義”の仮面をかぶった攻撃性が、面白いほど露わになったのである。多くの人は「今さえよければ、自分さえよければ、それでいい」と思っていても口に出すのはさすがに憚られる。それは、後ろめたいという感情が少しは残っているからだ。そこで、この時代の空気に反する行動をした人々を見つけ出し、罵詈雑言を浴びせて、自分は決して利己的な人間でないことを自分自身に無理やり納得させて、後ろめたさを払拭しようとする。
政府に自粛要請されると多くの人が外出しなくなり、「自粛警察」と呼ばれる人間まで出現。自粛を批判すれば猛バッシングにさらされる事態となったコロナバッシング。ただの多数派がいつから“正義の顔”をするようになったのか。不倫バッシング、コンプライアンス、禁煙ファシズム・・・“正義”が暴走する現在の日本では、自己保身という名の「リスクゼロ思考」が支配している。まるで家畜のようになった日本人。
日本は一応、民主主義国家を標榜しているが、この民主主義は国民が自力で勝ち取ったものでなく、敗戦により上から降ってきたものだ。少なからぬ数の国民が、劣等感と嫉妬心があることは間違いないが、さらにその根幹にあるのは、横並び教育を推し進める教育システムの劣化である。文科省を解体するくらいの荒療治をしなければ、日本の国力は回復しないだろう。
この国を支配する「空気の正体」・批判を恐れ「思考停止」する日本人!!
2021年2月25日 10:42 カテゴリー:書籍紹介