書籍紹介「東大医学部」和田秀樹・鳥集 徹 共著
東大医学部
和田秀樹・鳥集 徹 共著 ISBN978-4-89308-933-5
(鳥集)東京大学医学部医学科への進学が約束された理Ⅲが、日本のすべての大学学部のなかで偏差値トップであるだけでなく、東大の他学部に比べても飛び抜けて難関であることは、よく知られています。でも、そんなにスゴイ頭脳の持ち主なのに、なぜあえて医師になろうとするのか、私にはまったくわかりません。東大医学部を出たからといって、それだけで医師の中で「別格」の存在になれるわけではないからです。確かに昔は、大きな権勢を誇っていましたが、今は、往時の勢いはありません。なぜ、医学・医療界で東大医学部の相対的な地位が下がってしまったのでしょうか。それは21世紀に入り、権威主義的な医療が批判され、臨床を重視した医療へのパラダイムシフトが起こったからです。国を動かす政治家や官僚、法曹界、理工学系の研究分野や日本を支えるメーカーにも、優秀な人材は必要です。医学部ばかりに逸材が偏って、この国は大丈夫なのかと本気で心配になります。
(和田)高齢化が進むめば、薬の優先順位をつけ、その種類を制限できるよう、専門分化型の医療から総合診療型の医療に変わっていかないといけないし、正常値にこだわるよりもエビデンスを求めて、高齢者が最も長生きできる治療を研究しないといけない。なのに、事態は一向に改善していません。東大の各医局の教授は、自分たちの専門科の学会のボスであることが多く、専門分化を志向する傾向がとても強い。つまり、東大医学部が抵抗勢力になって、高齢化が進んでも、日本の医療が総合診療型に向かっていかないと私は考えています。それが高コストで、かつ人々の寿命にいい影響を与えていない事は明白です。たいした能力もないのに肩書だけが立派な教授に才能を潰されたり、教授の言うことが全部正しく、臨床より研究があるべき姿だと洗脳されて臨床も二流、研究も二流の医者になるくらいなら、別の世界で競争に勝ち抜いていく方が、本人のためにも国のためにもなります。
日本の医療を本気で憂う医師とジャーナリストが語る鉄門の錆!!
2021年2月4日 8:36 カテゴリー:書籍紹介