人間は遺伝か環境か?遺伝的プログラム論
日高敏隆 著
ISBN 4-16-660485-6
われわれの人生を決めているものは結局のところ何なのか?
遺伝か環境かあるいはその両方か?
遺伝の良し悪しとはどういうことか?親に才能があったとかなかったとか、家柄が良かったとか悪かったということか?
また、環境の良し悪しというのは、子供の頃から可愛がられてなんでも好きなことをさせてもらったとか、いじめられて育ったということか?
この遺伝とか環境を現代の生物学、特に現代動物行動学の認識に立って、遺伝という漠然としたものを遺伝的プログラムとその具体化という観点から捉え直した第一人者による試論。
例えば、人間とチンパンジーの遺伝子を比較すると、98%は同じで、違うのは、たった2%だけ。するとこの2%の遺伝子に人間とチンパンジーの本来的な違いが込められていると考えてよいのか?
ネコがネズミを食べるのは遺伝だが、どんな獲物を狩るかは、子供の時に母ネコが持ってきた獲物の大きさ(つまり環境)によって決まる。小さなネズミばかりを子ネコに与えているとその子ネコは大人になった時、大きなネズミを見ると逃げてしまう。
つまり遺伝と環境はお互いになっていて、どの部分が遺伝によっていて、どの部分が環境によっているのかを研究しても、やればやる程判らなくなる。
そこで、本書は遺伝か環境かという単純な問題ではなく、遺伝という漠然としたものを遺伝的プログラムとその具体化というアプローチで捉え直している。
2012年1月12日 9:32 カテゴリー:書籍紹介