書籍紹介「どこからが病気なの?」 市原 真 著
どこからが病気なの?
市原 真 著 ISBN978-4-480-68366-3
結局のところ病気とは「こないだまでの自分がうまく保てなくなること」。健康とは「こないだまでの自分をうまく保ち続けていること」(ホメオスタシス)。と定義します。その上で、病気であるとはどういうことか、平気であるとは、どういうことなのかを見ていきます。
私たちの体は都市であり、無数の細胞たちが極めて高度に分業と連絡調整を行うことで平穏無事に保たれています。奇跡のメカニズムはそう簡単に外敵の侵入を許さないし、仮にゲリラ的に何かが侵入してきても優秀な防衛部隊がそれを討ち取る。防衛部隊の放水攻撃や火炎放射によって、ときに局所が、あるいは全身が、様々な症状に襲われ「なんだか調子が悪いな」とか「ノドが痛いな」とか「鼻水が出たな」とか「首が腫れたな」などと感じる。このような経験があると、つい「病気であれば平気でない」し、「平気なら病気はない」と言いたくなる。
でも、一見なんの症状もなく平気でいるときにも都市のライフラインに圧をかけてダメージを蓄積させるような病態が潜んでいることはある。そうすると「病気と平気」の境界は少しずつとろけて、わかりにくくなる。
「病気VS平気」という二項対立は、西洋医学の発達により、もはや成り立っていない。平気でも病気のことがあるし、病気であっても平気に暮らせることもある。だから、病気かどうか決めることと、平気かどうかを決めることは、別々にやったほうがいい。病気かどうか決めるのは医者であり、自分自身であり、社会でもある。治療が可能か、という観点でも判断されるが、さらにいえば「この先どうなるのか」という未来予測的な観点で人体を推し量ることが診断の真骨頂だ。
ときに社会が人を病気というフレームにはめ込んでしまうこともあるが、そのレッテル貼りは適切なこともあれば、ややピントが外れだと感じることもある。なぜかというと、病気であっても平気な場合、平気であっても病気である場合など、見た目と、生物学的な定義と心の問題とか、それぞれ別に立ち上がってくるからだ。
病んでいるのか?元気なのか?フォロワー10万人の病理医が教える病気のしくみ!!
2020年6月4日 8:43 カテゴリー:書籍紹介