書籍紹介「病気は社会が引き起こす」木村 知 著
病気は社会が引き起こす
木村 知 著 ISBN978-4-04-082307-2
本書は医師として著者が経験してきた身近な事例を用いながら、医療費の問題や、昨今かまびすしい健康自己責任論について考えたものです。
著者は、私たちの健康や病気や貧困の問題が自助や自己責任に委ねられるべきものではないと主張する。健康も病気も貧困も根源、原因をたどっていけば、その人が置かれていた環境に行き着く。その人を不健康たらしめる原因となるものは、自然環境の悪化、労働環境の悪化あるいは生活環境・住環境の悪化かもしれない。これら環境の悪化原因がいずれであっても、ほとんどの場合、個人の努力や独力では、どうすることもできないものだ。
だから、生活習慣病という、個人に責任を負わせる呼び名は、そもそも適切でない。あえて名を付けるならば「生活環境病」だろう。自助努力のみで達成することが不可能な事柄は、個人同士の助け合いである共助によって改善させていくことも大切だが何よりも重要かつ必要不可欠なのは公助だ。
人々が「肉体的、精神的及び社会的に安寧である安全に良好な状態」を保つことができるように環境を良好な状態に整える。これこそが、国家の役割だ。従って、政府が推し進めている自助>共助>公助はまったく逆であって、公助>共助>自助が本来あるべき機能を有した国家であるといえる。国家が本来あるべき国家としてすべきは医療・介護・公衆衛生・格差・貧困対策・労働環境改善対策・教育に積極的に注力、つまり財を投入するということは社会保障費をはじめとした人への投資を増やすことになる。
例えば、インフルエンザの大流行は、風邪でも絶対に休めない社会が招いているのである。「自助」を強いられる不寛容社会で命を守るために私たちができることは何か?
プライマリケアを行う医師が健康自己責任社会に警鐘を鳴らす!!
2020年4月16日 8:43 カテゴリー:書籍紹介