書籍紹介「臓器たちは語り合う 」丸山優二 NHKスペシャル「人体」取材班
臓器たちは語り合う
丸山優二 NHKスペシャル「人体」取材班 ISBN978-4-14-088587-1
本書のコンセプトは「人体は巨大なネットワークである」というものです。これを別の言葉で言うと「臓器同士、細胞同士は互いに語り合っている」となります。これまで人体は「脳」が全身を支配し、その他の臓器はそれに従っているというイメージがありました。しかし今では、私たちの体はメッセージ物質であふれ、臓器同士、細胞同士は脳を介さず連携し、そのネットワークが人体を機能させているという考え方に大きくシフトしています。
例えば
(1)心臓がANPを出し、①腎臓に「尿を増やせ」②血管に対しては「血管を拡げろ」③「血管の内側をきれいにしろ」というメッセージとして働いています。さらに、心臓自身にも働きかけて④「がんの転移を防ぐ」可能性が高いのです。
(2)腎臓が血液中の酸素が減ったことを検知し、エポ(EPO)というメッセージ物質を出し骨髄に①「赤血球の増産を促す」レニンの分泌によって②「血圧の調整」さらに、糸球体からの原尿を尿細管で再吸収して③「血液の成分調整」をしています。
(3)脂肪組織がレプチンを分泌して食事をコントロールし①体重を安定させています。さらに、炎症性サイトカイン(アディポカイン)の「TNF-α」や「インターロイキン」により②免疫細胞を活性化させたり③「慢性炎症」を引き起こします。
(4)骨が出す「オステオカルシン」は「若さを保って」、「オステオポンチン」は「免疫力をアップ」というメッセージとして働いています。
以上のようなネットワークの性質として①メッセージ物質の多くは「引き戻す力」であり②一部に負荷がかかっても全体で受け止め③冗長性があるため一部が壊れても大きな影響は出ないか、重要な結節点(ex.腎臓)が壊れると大きく形を変える。つまり、病が重症化します。
“すべての細胞がメッセージを出し合うことで、私たちの生命は維持されています。従って、受け取る側の細胞がメッセージ物質を受け取る専用の受容体を作らなければ、メッセージ物質は素通りします”
2019年10月17日 9:02 カテゴリー:書籍紹介