書籍紹介「免疫と“病”の科学」 宮坂昌之・定岡 恵 共著
免疫と「病」の科学
宮坂昌之・定岡 恵 共著 ISBN978-4-06-514434-3
白血球はその種類ごとに役割分担があり、どのような細胞が刺激を受けるかによって異なるタイプの炎症反応が起こることがわかり、さらに免疫反応は炎症反応によって始まることも分かっています。
さらに、近年の最大の発見は、炎症が起きるときには、白血球だけではなく、全身の細胞が反応して炎症反応が進んで行くという事と、病原体のような体外から侵入して来る異物だけではなく、コレステロールや尿酸の結晶など、体内に溜まってくる生体由来の成分も炎症を起こすという事です。そして、このような過程の中で、炎症を起こす物質の種類や量によっては、通常は一過性に収まるはずの炎症反応が長引き、さらに体内のブレーキ機構などが破綻することによってドミノ倒し的な連続的現象が起こり「慢性炎症」という状態に至ることがわかってきました。
炎症が続くと、何が困るのでしょうか?ひとつは、炎症の影響が局所に留まらずに全身に広がっていく事です。これは「慢性炎症は万病のもと」となることにおおいに関係します。もう一つは、炎症を起こしている組織の性状や形態が次第に変わり、ついにはその組織の機能が低下してくる事です。
この「慢性炎症」という状態は、まだ一般にはあまり広く知られていませんが、近年の研究により、ありとあらゆる疾患に関与することがわかってきました。「慢性炎症」は、それ自身は症状が比較的軽いために見つかりにくいのですが、次第に進んで行くとともに、がん、糖尿病、動脈硬化やアルツハイマー病など様々な恐ろしい病気の原因となり、これらの病気を悪化させます。ご存じのように現代人の健康長寿をはばむ一番の原因は、がん、糖尿病、動脈硬化やアルツハイマー病です。従って「慢性炎症」の正体を明らかにして、その悪さを食い止める事が現代人の健康長寿の実現のために必須の事なのです。
最新免疫学でわかった、現代人を蝕む「万病のもと」
サイレント・キラー=「慢性炎症」
2019年4月25日 8:45 カテゴリー:書籍紹介