書籍紹介「すべての医療は“不確実”である」 康永秀生 著
すべての医療は「不確実」である
康永秀生 著 ISBN978-4-14-088567-3
健康な個人が、いつどんな病気にかかるかは、医師でもわからない。病気にかかった個人に、個別の治療がどの程度効果があるのか、あるいは効果がないのかも、実際にその治療を施してみないとわからない。不治の病を患った個人が、あと何年生きられるか、ピタリと言い当てられる医師はいない。
「現代の医療は進歩しているのだから、自分の病気も治せるはず」と、患者さんは誰しも思いたくなる。しかし、どんなに医学が進歩しても、すべての病を克服することはできないし、老化を止めることもできない。生物であるヒトはいずれ死ぬ。その意味で、医療は永遠に不確実である。
確かに医学は進歩し続けている。現代の医学は、過去から現在にわたって積み重ねられてきた人類の英知の総和である。ではなぜ、医学は進歩を続けるのか?その理由は、いつまでたっても医学は完璧ではなく、依然として医療が不確実だからである。いまだに多くの病気の原因は不明である。がんの原因すら完全に解明されているわけではない。喫煙、アルコール過量摂取、放射線、慢性炎症、特定の化学物質ががんの原因であることは知られている。しかし、多くのがん患者さんは、それらが全く当てはまらない。治療法がまだない難病も数多い。認知症も慢性心不全も肝硬変も、進行を完全に食い止めることはできないし、病気によって損なわれた身体機能も完全に取り戻すこともできない。
よく「先進医療」に過大な期待をする人がいるが「先進医療」とは先進的で治療効果の高い医療という意味でない。平たく言えば、技術だけは先進的であっても、効果に関するデータがまだ不十分な実験的医療だということである。
それでも信頼できる医療とは何か?医学の進歩の恩恵を受け、幸せに長生きするにはどうすればよいか?臨床疫学の第一人者が“科学的根拠”の有無を手掛かりに秘伝を伝授する!!
2019年3月7日 9:10 カテゴリー:書籍紹介