書籍紹介「医者の逆説」 里見清一 著
医者の逆説
里見清一 著 ISBN978-4-10-610750-4
通常の医療者の立場からすると「医者にあるまじき発言」と批判されることもあるが、臨床の現場で悩み、考え抜いてきた著者の言葉は苦く、刺激的である。「“失敗しない”と言う医者は信用してはいけない」「希望はときに患者を苦しめる」「延命よりも大切なものがあるだろう」「最後まで頑張らせる残酷さ」「休日の病院は危ない」ーコストも人的資源も限られている状況下で、私たちは医療に何を求め、何を諦めるべきか。遠慮も忖度も一切抜き、医者だから見える真実が詰まった比類なき一冊。
本書の内容を要約すれば、その「忖度」のメカニズムを解析する一方で「忖度」を剥ぎ取って「誰もが思っていること」をあらためて明るいところに提示して眺めてもらうことである。
我々は誰に遠慮しているのだろうか?「遠慮」「忖度」は日本の美徳なのかも知れないが、仲間内での諍いを回避しようとするあまり「誰もがそう思っていること」に目を瞠り、口を閉じて、黙って破滅に向かうのは、昭和初期に陸海軍内部の「和」を保つために「負けると誰もが思っていた」戦争に突入したのと全く同じ構図ではなかろうか、と思ってしまう。言論は空しい、いや言論だけではない、自分のしている事、文字も芝居も(著者の場合は「臨床も研究も」になる)、すべてが空しい。が、それを承知の上で著者はやはり今までと同じ様に何かを書き、何かをして行くと主張する。
遠慮忖度一切抜き、真実を射抜く医療論!!
2018年7月5日 8:56 カテゴリー:書籍紹介