書籍紹介「健康格差」 NHKスペシャル取材班
健康格差
NHKスペシャル取材班 ISBN978-4-06-288452-5
社会保障は、国がすべての国民に最低水準の生活を保障するため、国民の所得に応じて徴収する税金や保険料を財源に、再配分する形で行う政策である。
ところが今、頼みの綱である社会保障が曲がり角に差し掛かっている。戦後、日本の社会保障は経済成長、雇用の安定、家族形態、地域社会の4つの条件が揃ったことからうまく機能していたと考えられる。しかし、経済が停滞し、少子高齢化が進行し始めると、セーフティネットからこぼれ落ちる人たちが出始める。雇用の安定が崩れ、非正規雇用者が全体の4割に迫る状況まで激変。家族の形態も様変わりした。バブルの崩壊、リーマン・ショック、東日本大震災を経て日本社会は、社会保障制度を構築した当時の状況から一変。安定し、将来が計算できる社会から、雇用、病気、貧困、離婚など、一度社会でつまづいてしまうと立ち直りづらい、いわば「罠」(わな)が張り巡られたような不確実性の高い社会になってしまった。こうした「罠」に陥った先に「健康格差」があり、この状況を打破する処方箋を本書は探っている。
一見「健康格差」は、「自らの健康管理を怠ったゆえの自業自得」と捉えられることが少なくない。しかし、これは一部の人たちが不利益を被るという単純な問題ではない。「健康格差」を放置すれば、医療費や介護費の増大を招くだけでなく、破綻寸前にあると揶揄される日本の国家財政をさらに圧迫する。従って、いわゆる「自己責任論」で切り捨てても、結局は社会全体の問題として「しっぺ返し」のような形で、国民一人一人にのしかかってくる問題なのだ。
寿命って自己責任ですか?老若男女、誰もが当事者になり得る「命と健康のほんとうの問題!!」
2018年3月15日 8:52 カテゴリー:書籍紹介