書籍紹介 「抗生物質と人間」 山本太郎 著
抗生物質と人間
山本太郎 著 ISBN978-4-00-431679-4
肥満、喘息、食物アレルギー、花粉症、アトピー性皮膚炎、糖尿病。
それに加えて、自閉症やクローン病、潰瘍性大腸炎などを挙げる研究者もいる。共通項は、過去半世紀に急増した病気ということになる。こうした疾病を、その流行の様相から「現代の疫病」と呼ぶ人もいる。そして、これらの「現代の疫病」の背後にあると、多くの研究者が考え始めているものが、抗生物質が引き起こす私たちの体内に共生する細菌叢の撹乱なのである。人類の長い歴史を振り返ると、おそらく、そうした共生細菌の大きな変化は、少なくとも三回あった。
(1)一度目
ヒトが火の利用による加熱調理を始めたとき。十二万五千年ほど前に、ヒトが恒常的に火を使用していた証拠があるという。火の使用はタンパク質や加熱を通して、ヒトの消化吸収を助け、摂取エネルギーを高め、ヒトの脳の拡大を支えたが、私たちの消化管に常在する細菌叢も変えた。
(2)二度目
約一万年前に始まった農耕によって引き起こされ、ヒトの食性を、動物タンパク質中心から穀物中心へと大きく変えた。そして、私たちの腸内の常在する細菌叢にも影響を与えた。
(3)三度目
約七十年前から始まった抗生物質の使用による腸内細菌の変化と撹乱。拡大する薬剤耐性菌、増加する生活習慣病。その背後にはこの抗生物質の過剰使用がある。
撹乱され危機にさらされるヒト・マイクロバイオーム。万能の薬はいまや効力を失うだけでなく、私たちを「ポスト抗生物質時代」に陥れつつある。
(参1)マイクロバイオータは、ヒトに常在する細菌そのものの総称
(参2)マイクロバイオームは、常在する細菌とその常在細菌が行う生命活動全体
腸内細菌が危ない!!
2017年12月21日 8:45 カテゴリー:書籍紹介