書籍紹介「アルツハイマー病は【脳の糖尿病】」 鬼頭昭三・新郷明子 共著
アルツハイマー病は「脳の糖尿病」
鬼頭昭三・新郷明子 共著 ISBN978-4-06-502025-8
これからの日本人にとって、きわめて深刻な問題となっていくことが確実な、二つの病気があります。
一つは、アルツハイマー病(認知症の半分以上)です。健康保険で適用が認められている薬は、いま現在4種類あるものの、そのいずれも対症療法に留まっており、病気の進行を止めるものではありません。つまりアルツハイマー病には、現段階では根本的治療法はないので介護などの手段を通して、病気と“つきあって”いくほかはないという現状があります。
さて、もう一つの病気は「糖尿病Ⅱ型」です。糖尿病は、いまや日本人の国民病です。
実は、著者らの臨床的な研究や基礎的研究によって、この二つの病気の根本的原因が同じであることが浮かび上がってきたのです。糖尿病の主役は、ランゲルハンス島の中のβ細胞から分泌されているインスリンというホルモンです。アルツハイマー病で最も早期に強く冒され、病変の場の主役となるのは脳の海馬の神経細胞ですが、この海馬の中でも、膵臓と同じようにインスリンがつくられています。
ところで、健康な状態では、膵臓でつくられたインスリンは、血液脳関門を通過して、脳で作用を発揮します。ところが、インスリン抵抗性の状態では、インスリンは血液脳関門を越えて脳の中に入り込むことが難しく、記憶物質として働くことができません。これが糖尿病の人がアルツハイマー病になりやすいことの原因の一つです。また、糖尿病になると、インスリン抵抗性による高インスリン血症の状態なので、インスリン分解酵素がインスリン分解のために大量に消費され、脳内のアミロイドβタンパク質の分解ができなくなり、アルツハイマー病の発症に拍車をかけることになります。
アルツハイマー病の元凶は糖尿病と同様「インスリン抵抗性」だった!!
2017年9月21日 8:42 カテゴリー:書籍紹介