書籍紹介「医学の勝利が国家を滅ぼす」里見清一 著
医学の勝利が国家を滅ぼす
里見清一 著 ISBN978-4-10-610694-1
医学が進歩し、患者さんの治療成績は改善した。それはもちろん慶賀すべきことであるが、そのための治療コストは上昇している。ある程度は、それはやむを得ない。
しかし、そのコストが2割増しや3割増しではなく、100倍、1,000倍になるとすれば話は別である。誰がそれを払うのか。どこにそんな金があるのか。無限とも思える膨張を続ける医療コストの本質は、「医学の進歩」と「人口の高齢化」であって、この二つには、誰も責任がない。そして誰にも止められない。誰も悪くないのに、自分に被害が及ぶ。負担が増える、医療が受けられなくなる。不条理としかいいようがないが、残念ながら現実である。その現実を直視することから始めねば仕方がない。
最近になって財務省も厚労省も、少なくとも「高額薬の問題がある」ことと、医療財政が破綻の危機に瀕していることを公に認めるようになったようだ。話のとっかかりになったのは免疫療法剤オプシーボであるが、ことはこの「一つの薬」だけの問題ではない。
そこで著者は、現実的な解決法として75歳以上の患者には、対症療法はこれまでと同じようにきちんと行うが、すべての延命治療を禁止することを提案する。人は例外なく、一定のスピードで年をとる。金持ちも貧乏人も、天才も愚者も、一流のアスリートも虚弱者も、この点においては、同様であり、これ以上公平なことはない。
爆発的に膨張する医療費は財政の破綻を招き、次世代を巻き添えに国家を滅ぼすことは必至なのだ。「命の値段」はいかほどかなど、著者が昨年「新潮45」誌11月号に発表以来、新聞、テレビ等で大反響の論考を書籍化したのが本書である。
①夢の新薬→ ②医療費膨張→ ③財政破綻
現役医師の衝撃告発!
2017年3月2日 8:42 カテゴリー:書籍紹介