書籍紹介 「肺が危ない」 生島壮一郎 著
肺が危ない
生島壮一郎 著 ISBN978-4-08-720545-9
当たり前のはずの「息をする」ことが、なんらかの原因でうまくできなくなり、苦痛を伴うようになる病気があります。それが肺炎や気管支炎、肺がん、そして世界的に問題になっているCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの呼吸器の病気です。呼吸器の病気を専門的に診療するのが呼吸器科の著者の仕事です。
日々、肺や気管支の病気でやってくる患者さんを診療していると、症状に苦しんでいる場合でも、本人が肺や呼吸のメカニズムに無関心であることに驚きます。そして、そのことが呼吸器を取り返しのつかない段階まで悪化させているように思います。
まず、肺の構造に関する誤解です。肺というのはゴム風船のような、単なる袋状の構造だと誤解している人も多いようです。
思い切り息を吸い込むと胸が膨らみ、吐き出すとへこむので肺そのものが膨らんだりしぼんだりしながら空気を出し入れしていると思われているようですが、そうではありません。肺はスポンジのような形態をしています。肺胞という空気を入れた小さな袋の集まりと、そこに空気を届けるための気管支、血液を循環させるための無数の血管とによって密集した木の枝のような構造になっています。
肺胞には、細かい毛細血管が張り巡らされて、その毛細血管で、取り込んだ空気のなかの酸素を血液に溶かしこみ、不要になった二酸化炭素を血液から肺胞内の空気に戻す「ガス交換」が行われています。喫煙が主な原因であるCOPDの患者さんは、最初は密かに進行する病魔に気づかず、肺がんなどの合併症によって初めて気がついた時にはすでに手遅れとなっていることも多く、スカスカになった肺の組織は、薬などの治療で元の健康な状態に戻すことはできません。そして、呼吸困難に苦しみ、喫煙を後悔しても、その後悔の思いを言葉で伝える機会もないまま最後を迎えまます。
今ある生命の闘いを意識して、タバコをやめる!!
2016年5月12日 8:57 カテゴリー:書籍紹介