書籍紹介「生物学の<ウソ>と<ホント>」 池田清彦 著
生物学の「ウソ」と「ホント」
池田清彦 著 ISBN978-4-10-423111-9
生物のルールと例えば将棋のルールの決定的な違いは、将棋のルールは人間が決めたものだが、生物のルールは人間が決めたわけではなく、勝手に決まっているのだ。そこで、大事なことは、人間はそのルールの全てを未だ理解できていないことである。さらに面倒なことは、ルールは時々勝手に変わるらしく、ルールを変えるメタルールがあるかどうかが定かではないことだ。
生物の基本原理を理解していない人々は時々、ここから生物は物理化学法則に縛られない神秘的なものだとの考えを抱くことにあるようだ。しかし、すべての生命現象は、熱力学の第一法則(エネルギーの保存則)と、第二法則(エントロピー増大則)の支配下にあり、生物の体は物質以外のものからは構成されていないことを理解すれば、霊魂といったものが存在しないことは自明であろう。
現在の生物学の知識で説明できない現象はまだ沢山あって、理解されるまではペンディングにしておくのが科学的な態度なのだ。例えば、生物はすべて神が創造したという説(特殊創造説)や、すべての進化は遺伝子の突然変異と自然選択で起きたというネオダーウィニズムは、まだ解明されていないことに目を瞑って、自分の頭で、理解できる知識だけで全てを説明してしまおうという、知的怠惰の産物である。
本書は、生物学の広範な領域から、読者の興味を引くと思われる88個のトピックを5つのタイトルの下にまとめて解説されています。
個々のトピックは読みやすいように見開きでまとめてあり、律儀に最初から読み始めなくても興味のあるところから読めるように工夫されています。
生物をめぐる根源的な疑問から、フシギな生命現象のしくみまで、最新の知見を尽くして明解に説く、ホンマでっか!?な生物講座。
2015年12月3日 8:57 カテゴリー:書籍紹介