書籍紹介「下流老人」 藤田孝典 著
下流老人
藤田孝典 著 ISBN978-4-02-273620-8
日本に「下流老人」が大量に生まれている。この下流老人の存在が日本社会に与えるインパクトは計り知れない。
本書では、下流老人を「生活保護基準相当で暮らす高齢者及びその恐れがある高齢者」と定義している。
著者がなぜ、この言葉をつくったのかといえば現在の高齢者だけでなく、近く老後を迎える人々の生活にも貧困の足音が忍び寄っており「一億総老後崩壊」といえる状況を生み出す危険性が今の日本にあるためである。
平均的な給与所得があるサラリーマンや、いわゆるホワイトカラー労働者も、もはや例外ではない。現役時の平均年収が400万円前後、つまり、ごく一般的な収入を得ていても高齢期に相当な下流リスクが生じる。
下流老人は、いまや至るところに存在する。日に一度しか食事をとれず、スーパーで見切り品の惣菜だけを持ってレジに並ぶ老人。生活の苦しさから万引きを犯し、店員や警察官に叱責される老人。医療費が払えないため、病気を治療できずに自宅で市販薬を飲んで痛みをごまかす老人。そして、誰にも看取られることなく独り静かに死を迎える老人…。そして、その実態や背景は驚くほどの多くの人々に知られていない。あるいは恐ろしいすぎて無意識のうちに目を背けているのかもしれない。
著者は埼玉県を中心に12年間、下流老人を含めた生活困窮者支援を行うNPO法人の活動に携わってきた。そこでの実体験を踏まえ「老後の貧困」の深層に迫っている。著者が本書で執拗に強調してるのは「下流老人を生んでいるのは社会である」ということだ。
忍びよる「老後崩壊」の足音…。日本人の9割は他人事ではない!
2015年11月19日 8:54 カテゴリー:書籍紹介