書籍紹介「医学の大罪」 和田秀樹 著
医学の大罪
和田秀樹 著 ISBN978-4-7993-1398-5
医療技術が進歩していくなかで、確かに寿命は延びました(乳幼児死亡率の低下を除くと、寿命の延びは必ずしも医療の進歩のおかげだと思えないが)。けれども、わが国の死因の圧倒的一位であるガン患者数も死亡者の数もいっこうに減りません。糖尿病とその合併症を中心とした、いわゆる生活習慣病患者の数も増える一方です。
大学の医学部は相変わらず受験生に人気ですが、地域医療は崩壊寸前で少子化対策のかけ声の陰で産婦人科や小児科の不足が深刻化しています。
つまり、医療については問題山積。逆に言えば、まだまだ改革の余地が多大にあり、多くの人が様々な立場から、医療を巡る様々な問題を指摘していますが、その問題の多くが、そもそも医療関係者の多くを世に送り出す、大学の医学部にあります。いまの医学部は3大機能の臨床・研究・教育のどれをとってもひどい状態にあります。改革に関しては、医学部といえども大学の医学部は文科省、附属病院は厚労省の指揮下にあり行政の力でできることはたくさんあります。
実際、新臨床研究制度の導入で、これまで表面に出なかった、それぞれの大学病院の臨床と教育の実力の差が明らかになり、一部の大学に改革を余儀なくされています。同様に放射線科など時代のニーズを受けて今後もっと増やさなければいけない科や、産科・小児科など医学生には不人気だけど減らしてはいけない科がある一方で、急患の少ない眼科や皮膚科が増えている問題など、例えば保険の点数を変えることで、ある程度解消できるはずです。
製薬会社との癒着問題になっている新薬の治験についてもアメリカのFDAのような公的機関をつくるなど認可の仕組みを変えればよく、教授の選出方法も教授による互選でなく、第三者を加えることを義務化するなど、挙げればきりがありません。
医学・医療の進歩の最大の抵抗勢力となっている医学部が変われば、先進医療立国になる事も夢ではなく、その日に向けて著者は、これまで誰も書かなかった医学部の22の大罪をあえて問うています。
2014年1月9日 9:22 カテゴリー:書籍紹介